音楽の話をしているとき、たまに「ルーディ」という形容詞を使うことがある。普段なんとなく「不良っぽい」というイメージで使っているんだけど、先日初めて辞書で調べてみた。「RUDIE=RUDE BOY。〔ジャマイカ俗〕 (失業中で悪さを働く)ちんぴら、こそ泥 」だそうで、なるほど。

そんなわけで、今月のお題は「ルーディ」。ルーディな音楽、ルーディなジャケット、アーティスト自身がルーディ・・・などのセレクションです。

Toru WATANABE (pee-wee marquette)

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Toru WATANABE (pee-wee marquette)
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Masao MARUYAMA (musique dessinee)



ROY PORTER SOUND MACHINE / INNER FEELINGS
(P-VINE)


この当時、既に齢五十過ぎにも関わらず、まだまだ現役バリバリの強烈ビートを生み出しまくっていたコロラド出身のドラマー、ROY PORTER氏の1975年のソロ二作目。強烈なドラムブレイク入のジャズファンクから、A.C.JOBIMの名曲をトンデモナイ状態に仕立てた「WAVER-ING」まで、とにかくハンパ無い男前サウンドがギッシリ。猛烈にドラマチックな「JESSCIA」なんて、不良大人の為のテーマ曲としか言いようの無い渋さデス…


TINO CONTRERAS / GOOD BEAT
(FESTIVAL)


オウムのジャケットのアルバム『TROPICAL JAZZ』が人気のメキシコのパーカッション奏者、ティノ・コントレラス。これは1950年代後半にフランスでリリースされたコンパクト盤です。ルーディな気分満点のバップスキャット/ヴォーカル入りの「GOOD BEAT」、そして「TADD LIGHTS」がアップテンポのハードバップで素晴らしい。ヘンリー・マンシーニ作「PETER GUN」もユーモア溢れる演奏が最高です。パーソネルのクレジットが無いので、演奏者が気になるところ。


PATRICE LAMY - L'AMOUR A TRIOS
(RCA)


う、宇宙人なの?… ジャケに写る謎の生命体も気になるところ。恐らくは仏のプログレ系のグループと思われるPATRICE LAMYの1974年の7’。タイトル曲は微妙ですが、注目は何かが吹っ切れた感じすら漂う疾走メロウ・ファンクの「LAISSE-MOI MEDIRE QUE JE T’AIME」。パーカス交え、ズバッと打ち抜くビートに乗せ、スペーシーな男女のヴォーカル、メロウなエレピが折り重なるクールな一曲です。中盤のスキャット&ブレイクも意外にハマってます…


EDDY MITCHELL / ZIG-ZAG
(BARCLAY)


フランスの男性シンガー、エディ・ミッチェル。エルヴィス・プレスリーに影響を受けたロックンローラー(=ルーディ)というイメージが大きいのですが、1970年代はソウル/ファンクを中心としたヴァラエティ豊かな作風にシフトしている。1972年リリースの本作は、グルーヴィーなブラジリアン「STOP」、バート・バカラックが舞い降りてきたような「JE QUITTE LA VILLE」、そして以前丸山さんが紹介したファンキーナンバー「C'EST FACILE」など、名曲多数の大傑作です。


ERIC B. & RAKIM / MICROPHONE FIEND
(UNI)


『マイクの悪魔』、あるいは『マイクの鬼』。これほど的を得たタイトルも、そう無いでしょう… 20世紀を代表する二人組、ERIC B. & RAKIMの名作2ND『FOLLOW THE LEADER』に収録の逸品「MICROPHONE FIEND」。ジワジワと迫り来るAVERAGE WHITE BANDをループさせたトラックも然ることながら、飛び散る唾がかすっただけでヤケドしそうなRAKIMのライミングが失禁モノ。『ルーディ』とか、そんな次元を超え、ひたすらドキドキさせられます…


MICHEL COGONI / OUBLIE QU'ELLE EST SI BELLE (PHILIPS)

ジャケットのツラ面構えからしてタダ者でないって感じですが、このMICHEL COGONIというフランスの男性シンガー、音の方もJACQUES DENJEANがバッキングを手掛けたヒップ&モッドなサウンド。「OUBLIE QU'ELLE EST SI BELLE (CRUEL SEA)」「SOMBRE VILLE (RAT RACE)」が共にボッサとツイストを掛け合わせたようなダンスナンバー。これは2枚目のコンパクト盤だけど、初期の盤には大抵1曲は良い曲が入っているので、他の盤も要チェックですね。


LOS SALSEROS / LOS MASGRANDES (SAFARI SOUND)

う〜ん強面… 恐らくは仏海外県・マルティニーク出身の5人組・ラテン〜サルサバンド、LOS SALSEROSの1970年代のマイナー作品。世界各国から結構気になる面子が参加している編成も興味深いですが、洗練されたジャジーな雰囲気が抜群の1枚です。切れ味鋭いラテンジャズダンサー「NEW SON」の中盤のエレピ→トランペットソロと流れる展開なんて男気ムンムンでたまりません。輝く白襟が、男前度数を上昇させてますネ。


GARY WILLIAM FRIENDMAN / ICH BIN ICH (GLOBAL)

ゲットーっぽい雰囲気の舞台のジャケット写真。以前、アメリカのミュージカル『THE ME NOBODY KNOWS』のサントラ盤を紹介しましたが、本作はそれをドイツ語に歌い直したドイツキャスト盤。本場アメリカ版でも早いテンポのグルーヴィーナンバーが多数ありましたが、ドイツ版では輪をかけて高速アレンジでたたみ掛けます(その分演奏の線が細くなっているのは残念ですが・・・)。ドイツ語ヴォーカルの硬質な語感を合わせて、ルーディな雰囲気を醸し出しています。


MR. DAY - GET YOUR POINT OVER (FAVORITE RECORDINGS)

ジャンルを問わず、課外活動も豊富なヴェテランシンガー、MR.DAY渾身の男前ナンバー「GET YOUR POINT OVER」。セクシーな男の色気漂う彼の歌声の格好良さはもちろん、そのイントロから一気にアゲまくるホーンセクション&タフなリズム隊を軸にしたバッキングがヒドく熱いです… ボコボコ転がるパーカッションに、待ってましたぁ〜、とばかりに飛び出すハモンドオルガンのソロとか、分かりすぎてて怖いくらいに完璧な一曲デス…


ROCKY ROBERTS &THE AIRDALES / STASERA MI BUTTO
(DURIUM)


以前、MONKISSの盤を紹介したこともあるイタリアの男性シンガー、ロッキー・ロバーツ。これはジャケットもかっこいい1967年リリースのシングル盤です。タイトル曲はイタリアの音楽番組「SABATO SERA」の主題歌にもなっていたらしい。彼のバックバンドAIREDALESによるキレの良い演奏に合わせて、ロッキー・ロバーツは気持ち良さそうに歌っています。裏面「JUST BECAUSE OF YOU」も同タイプの踊れるナンバー。