ROK-SEY
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「第18回 YUSEF LATEEFでも聴いてみよう」
さてさて、前回は「SPARTACUS」というYUSEF LATEEFのヴァージョンで有名な映画のサントラ曲を挙げさせて頂いたのですが、今回はそのYUSEF LATEEFと言う事で、何卒、お付き合いの程、宜しくお願い致します。

まずは、その名前。少し変った名前、YUSEF LATEEFですが、本名ではありません。イスラム教名であり、本名はWILLIAM EMANUEL HUDDLESTONと言います。1920年、10月9日、テネシー州チャヌターガ生まれ。5歳のときに両親とデトロイトへ移り、そこで高校まであがります。始めはアルトをプレイしていたのですが、その頃にテナーにスイッチ。ローカルでプレイしつつも、MILT JACKSON、TOMMY FLANAGAN、BARRY HARRIS、PAUL CHAMBERS、DONALD BYRD、HANKにTHADにELVINのJONES兄弟、KENNY BURRELL、LUCKY THOMPSON等と親交を深めたといいます。そのLUCKY THOMPSONの薦めで、LUCKY MILLENDERバンドへ入るため、ニュー・ヨークへ移ります。これが46年。そして49年にはDIGGY GILLESPIEのバンドへ参加。この頃まで彼はBILL EVANSと名乗っています。これを本名とする説もありますが、まぁ、WILLIAMSなのでBILLなんですけど、何でEVANSなのかは・・・すみません、分かりません。そして50年になると地元デトロイトへ戻り、改めて大学に入り作曲とフルートを学びます。その頃、彼はイスラム教に改宗し、名前をYUSEF LATEEFと改めました。その後、地元で自身のバンドを組み、メンバーはCURTIS FULLER、HUGH LAWSON、LOUIS HAYES等を中心とし流動的な部分もありました。デトロイト交響曲楽団にも参加しており、そこでオーボエも学んだとの事です。

と、どっかの情報の編集作業による60年頃までの略歴はこの位にしておいて。その後は、56年のSAVOY初リーダーから、傍系を含むPRESTIGE、IMPULSE、ATLANTIC等に吹き込み続け、100枚以上のレコードを残しているようです。どなたかサイド作を含めた完璧なディスコグラフィーを作ってくれたらステキです。人任せ。

さて、YUSEF LATEEFというと、過小評価という言葉がついて回りますが、実際どうなんでしょうか。なんだかLEE MORGANとかでさえ、B級とか言ったりしますからね、日本のジャズ・ファンは。ハードルが高過ぎです。これだけ多くの作品をリリースし、大学の教授を務め、グラミーまで取ってるわけで。もっと評価されても良いハズ!っていうご意見は僕も納得ですが、世界の得体の知れない木管楽器を駆使してチンドン演ってる人がグラミーまで取ってるわけですからね。でも、日本での評価が低かった、という理由は分かります。スウィングする「これぞアメリカ」な音楽をジャズに求めているのに、よく分からん人に真顔で「東洋です。」とか言われても、ねぇ。って感じですものね。そして曲にもよりますが、「LOVE THEME FROM SPARTACUS」を例に挙げるとすれば、淡々とメロディーを吹きバックも粛々とこなすだけで、誰もソロを執ろうとしません。イマジネーション豊かなソロはどこだ!。となるのは当然といえば当然で、その時求められていた「ジャズ」とは違っていたのでしょう。YUSEFは2枚、客演でBLUE NOTE作に参加してますが、それこそBLUE NOTEでリーダー作でもあれば違っていた気もしますけど。

既に出てきましたが、彼を語る上で避けられないのが「東洋思想」といわれるもの。宗教的にもDON CHERRYのようなブッディズムというよりは、イスラームなものが強いのですが、このご時勢のミュージシャンに多く見られるように、宗教以外の部分では、いわゆる西洋的な解釈とは違ったもの、といったざっくりしたものだったのではないかと思います。COLTRANEへの東洋思想を位置づけたのは彼だとよく言われますが、COLTRANE自身はその東洋思想にのめり込んで、宗教家との交流も深め、息子にRAVI SHANKARのからRAVIと名づけたりしたのも有名な話。そして、ナイジェリアはヨルバ出身のジャズ・パーカッショニストBABATUNDE OLATUNJIがNYにアフリカ交流センターを作ったとき、そこの主な出資者はYUSEF LATEEFとCOLTRANEでした。でCOLTRANEの生前最後のライヴがOLATUNJIセンターであったのはまた別のお話。ちなみに、YUSEFバンドのベーシストERNIE FARROWはALICE COLTRANEの義理のお兄さん。というのもまた別の話。

でもですね、その彼の異端と言われる部分が僕らの心をブッコ抜いたわけです。明らかに他のジャズとは違う響き。ポリリズミックといってもハイラフ的なものでは無く、東洋的モーダルで琴線に触れる哀愁のメロディー、そして難解でもなく、世界のチンドン楽器を使ってのニヤリとしてしまう楽曲、スピリチュアル的な要素もありつつ、バラードやスタンダードでは抜群のテナー。あまり評価されていなかったというレア・グルーブ的視点もありつつ、近年、評価が絶対的なYUSEF LATEEFでした。ちなみに現在も存命、現役。作品も発表しています。

既にこのコラムで、幾つかのYUSEF作品を挙げさせて頂いてるのですが、それは省いてみました。という訳で「EASTERN SOUNDS」も「BEFORE DOWAN」もあらやこれも無しで。是非是非バックナンバーもご覧下さいませ!。「JAZZ NEXT STANDARD ?SPIRITUAL JAZZ-」で担当させて頂いた内容と多分に被りつつ(すみません)、個人的には初期(ATLANTIC以前)の作品が好みですので、その辺りを中心に幾つかの彼の作品をご紹介させて頂ければと思います。

彼のリーダー作ディスコグラフィーはこちらでどうぞ!。
http://www.nme.com/artists/yusef-lateef

今回もお付き合い有難う御座いました!。




YUSEF LATEEF / JAZZ AND THE SOUND OF NATURE (SAVOY 1957)

辰緒さんのUNIVERSAL夜ジャズ・シリーズでもリイシューされた「BEFORE DAWN」に収録のタイトル曲を聴いて、んん、と思われた方もいらっしゃるかと思うのですが、そんな曲が「SOUNDS OF NATURE」と「GYPSY ARAB」。にやりとして頂ければと。激渋モーダル「SONG OF DELILAH」他、いい曲揃い。
YUSEF LATEEF / JAZZ FOR THE THINKER (SAVOY 1957)

CURTIS FULLERとの2管フロント。やっぱり面白いのは「HAPPYOLOGY」。YUSEFとしては珍しく、いや、この頃のジャズとしても珍しいのでは、ハイライフなのかチャントなのか、ヴォーカル入りのイントロからアフロタッチに展開し、唐突にモダンにスウィング。「MIDDLEY」はスパニッシュなリズムで。
YUSEF LATEEF / THE DREAMER (SAVOY 1958)

YUSEFのテナー、フルート、オーボエ、アルゴルに、もう1本ユーフォニウムというフロント。ちゃこぽことしたドラムとフルートとユーフォによる「ANGEL EYES」のカヴァーと、東洋的なマイナー・テーマが既にYUSEF節な「THE DREAMER」が好きです。でもB面のバップとバラードも凄く良いんです。
YUSEF LATEEF / LATEEF AT CRANBROOK (ARGO 1958)

ライヴ盤。アフロ・ポリリズミックなリズム・パートが占める長尺オリジナル「MORNING」。アルゴルによるチンドン・ミーツ・チャルメラ楽曲「BRAZIL」、「WOODYN’ YOU」のカヴァーは本編とは関係の無いアフリカン・チャントから始まる「HAPPYOLOGY」に続くYUSEFの十八番展開。アフロ色濃厚。
YUSEF LATEEF / CRY! TENDER (NEW JAZZ 1959)

あくまでYUSEF節ということであれば、アルバム冒頭のオーボエ楽曲「SEE BREEZE」とフルートでの「DOPOLOUS」。映画音楽のように美しいメロディーにオーボエが映える「SEE BREEZE」と、「SPARTACUS」路線ともいえるギリシャ的メロディーの「DOPOLOUS」です。
CLARKE TERRY / COLOR CHANGES (CANDIDO 1960)

本作はフロント5管の作品。リード奏者のもう1人はSELDON POWELL。なのでフルート2本の掛け合い、とかテナーのチェイスといったものが聴けます。わざわざジャケで「FEUTURING…YUSEF LATEEF」と銘打ってます。アルバムの中でも異色の東洋趣味ジャズ「BROTHER TERRY」はYUSEF節。
CURTIS FULLER / BOSS OF THE SOUL-STREAM TROMBONE (WARWICK 1960)

デトロイト仲間CURTIS FULLER。YUSEFとFREDDIE HUBBARDの3管。YUSEFが大々的にフィーチャーされているのは「FLUTIE」。それよりアルバムのオープニングの「CHANTIZED」が良い。翌年の「THE MAGNIFICENT TROMBONE」に続くようなマイナー・ハードバップ「DO I LOVE YOU」も良いです。
YUSEF LATEEF / INTO SOMETHING (NEW JAZZ 1961)

YUSEFのワンホーンで、ELVIN JONESも参加した、彼のアルバムの中ではかなりオーソドックス・スタイルな演奏。そんな中でオーソドックスながら抜群なのが「I’LL REMEMBER APRIL」のカヴァー。彼のフルートと程よいラテン・タッチがかなり洒脱。彼のテナーが楽しめる1枚とでも言っておきましょうか。
YUSEF LATEEF / THE THREE FACES OF (RIVERSIDE 1962)

多分、阿修羅とかそういった東洋の仏像がモチーフなんでしょうね。フルートとテナーとオーボエで3つの顔のYUSEF。ここで彼らしい楽曲といえばフルートを用いての「FROM WITHIN」、「LATEEF MINOR 7TH」、「ADORATION」の3曲。RON CARTERのアルコがいつに無くおどろおどろしく響きます。
CANNONBALL ADDERLEY SEXTET / IN NEW YORK (RIVERSIDE 1962)

アルバム「PLANET EARTH」を受けてのライヴ盤。そこからはタイトル曲「PLANET EARTH」と「SYN-ANTHESIA」を。特に後者のオーボエはYUSEFならでは。そしてモーダル・クラシック、JIMMY HEATHの「GEMINI」も。ほんとにCANNONBALL ADDERLEYは凄いと僕は思っています。
ART BLAKEY AND THE AFRO-DRUM ENSEMBLE / THE AFRICAN BEAT (BLUE NOTE 1962)

「HOLIDAY FOR SKINS」に続く、ART BLEAKEYによるアフロもの。怒涛のパーカッション群の中で1人だけフロントをとるのがYUSEFです。フルート、オーボエでを駆使した「OBIRIAN AFRICAN」、「LOVE THE MYSTERY OF」など。かなり好き。YUSEF参加のもう1枚のBNはGRANT GREENのアルバム。
JULIAN CANNONBALL ADDERLEY / THIS HERE (RIVERSIDE 1963)

幾つかのライヴ演奏を集めたアルバム。親分に似合うファンキー・テイストな「PETER AND THE GOATS」というYUSEF提供曲を取り上げてます。そして何よりモーダル・クラシック「NEW DELHI」。親分から特別にご紹介のナレーションを受け、唸り声を上げるフルートへ。ぶるるるんっ。って言います。最高。
YUSEF LATEEF / JAZZ ‘ROUND THE WORLD (IMPULSE 1963)

各国の伝統音楽をジャズ・アレンジでという企画。YUSEFらしい「RAISINS AND ALMONDS」等の楽曲の中、注目は「りんご追分」のカヴァー。こんなベース聴いたことないです。ミュートしっぱなしで音は変えずにかなりのオフタイム。これはもう打楽器。YUSEFの世界観をきちんとバックが支えてます。
CANNONBALL ADDERLEY SEXTET / IN EUROPE! (RIVERSIDE 1963)

ベルギーのライヴ盤でお隣のオランダからリリースされた1枚。で、ライヴ盤「IN NEW YORK」の流れを引き継ぎつつ、ここで本当に僕が大好きなのがYUSEFの「P BOUK」の激アグレッシヴなヴァージョン。まさに怒涛のソロ回し。一聴してYUSEFと分かる東洋的なソロ。本当に最高。大好きなアルバム。
YUSEF LATEEF / LIVE AT PEP’S (IMPLUSE 1964)

のっけの「SISTER MAMIE」からヘンな音を出すのは、シャナスというリードが2つあって?オーボエみたいな?楽器だそうで。ライヴ盤で音はクリアなのですがちょっと線が細い感じは否めないです。ピアノはMIKE NOCK。ジャズ・ロック的な「SLIPPIN’ & SLIDE」もナイス。フルートをブーブー笛のように。
YUSEF LATEEF / LOST IN SOUD (UNION 197?)

YUSEFの日本盤7インチはなぜかたまに見かけます。基本的にはLPを小さくして可愛い感じなのですが、これはオリジナルLPとも違ったデザイン。ここではテナーだけですが、ジャケットはやっぱりオーボエ。ライナーで本名:ウィリアム・ラッセルとあります。ラッセルとは。やはり謎な人だったんでしょうね。



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▼編集後記

オルガンバー所属。常連。ヒロセダイスケ。


仙台の広瀬川に掛かる橋、広瀬大橋が僕の名前と一文字違いなので以前からとてもシンパシーを感じており、いつか一度行ってみたいと思っています。どうも、DMRの廣瀬です。本日も仕事頑張っております。二重が治りません。眼瞼下垂ってやつですか。寝不足と呑みすぎでむくんでるだけですかね。どうも。YUSEFもさることながら、個人的には、親分、CANNONBALL ADDRELEYも大好きです。今度、CAPITOL期、DAVID AXELROD時代のもやりたいです。「WORK SONG」とか「MERCY X 3」だけを取り上げて、ソウル・ジャズの第一人者とか、そういった括りばっかりなんですよ。親分。「KIND OF BLUE」だって参加してるし、RIVERSIDEでは彼が発掘した人はいっぱいいるし、DAVID AXELRODに全幅の信頼を置くジャズマンなんてそうはいないはず。そう思って今日も寝ます。ちょっとだけJOJO読んでから。おやすみなさーい。
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