ROK-SEY
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「第17回 「LOVE THEME FROM SPARTACUS」でも聴いてみよう」
さて、今回は「LOVE THEME FROM SPARTACUS」がテーマです。知っている人も知らない方も是非どうぞ。まずは「LOVE THEME FROM SPARTACUS」、すなわち邦題「愛のテーマ、スパルタカスより」というタイトルからもご推察の通り「スパルタカス」という映画の中での「愛のテーマ」という1つの楽曲です。STANLEY KUBRICKが監督の60年の映画です。すみません、内容は未見です。ここで作曲を手掛けていたのはALEX NORTHという人で、ハリウッドで幾つかのサウンド・トラックを手掛けています。

で、ジャズ・テイストを基礎にストリングスいっぱいで演奏されるオリジナル・ヴァージョンである「LOVE THEME FROM SPARTACUS」。確かに哀愁たっぷりのいい曲ですが、まず、この「LOVE THEME FROM SPARTACUS」をカヴァーで取り上げるのがYUSEF LATEEFです。今、「LOVE THEME FROM SPARTACUS」というと、以下「SPARTACUS」と致しますが、このYUSEF LATEEFのヴァージョンをジャズでのオリジナル・ヴァージョンとするケースが一般的です。JOHN COLTRANEの「MY FAVORITE THINGS」みたいな感じで。

YUSEF LATEEFは「EASTERN SOUNDS」という60年のアルバムでこの曲をカヴァーします。ここでの「EASTERN」ですが、基本的には60年代ですから、西洋から見た別文化、ヨーロッパから東、トルコから東のアジア文化全般のことを指すとみるのが妥当でございますでしょうか。すなわちYUSEF LATEEFが恭順するイスラム文化を中心に、その中に中国的なものもテーマに含まれてるといったニュアンスでしょうか。今僕らが思う東洋とはまた少し違うかと思います。COLTRANE始め、この時点での東洋思想=イスラム文化というのが大多数。ただ、そこに僕らの日本が全く除外されていたかというと全くのゼロと言う訳ではないような気もします。以前もちょこっと書いたのですが、BILL EVANSが「KIND OF BLUE」のノーツでモーダル・ジャズと「JAPANESE=墨絵」についての近似値について触れております。まぁ、墨絵は中国なんですけどね。そういったざっくりとした「EASTERN」な感じだと思います。いわゆる「月の砂漠」なイメージというか。実は「月の砂漠」のモチーフは鳥取砂丘だったなんてウンチクは置いといて。YUSEF LATEEFについてはいつかお話できればと思いますので宜しくお願い致します。このアルバムは61年にPRESTIGE傘下のMOODSVILLEからリリースされるとすぐさま本家PRESTIGEからリリースされます。この時までは文字はオレンジです。そして70年代のセカンド・プレスで青い文字となりOJCにも引き継がれます。この辺りちょっとあいまい。あんまりどれがオリジナル・プレスとか執着が無いのですが、青字で紺ラベルを見たことがないので。

ここでの「SPARTACUS」ですが、丁寧にメロディーをなぞっている様でいながら、恐ろしく哀愁漂うオーボエの音色にひたすら繰り返すバッキング。このバッキングのループ感がクラブ的なニュアンスを多大に含んでいるとはSOILの社長の弁。そしてなるほどなぁ、と思いました。この曲が改めて世に注目されたのはやはりロンドンのジャズ・シーンでした。さらに大仰を承知で言うならばGILLES PERTERSONです。彼が行っていたサンデー・アフタヌーン・イヴェント「DINGWALL」発の再評価といえる曲です。この曲でみんなが踊っていた。とはGILLESの弁。本当でしょうか。と疑いたくもなるような曲ではあるんですけどね。クラブ・シーンでは、まずTERRY CALLIERがほぼ別曲、更には歌詞付きでカヴァーします。その後、幾つかのクラブ・ジャズ発のユニットがカヴァーし、日本ではNUJABESさんによりサンプリング・ソースとして広い人気を博したり、INO HIDEFUMIさんがカヴァーしたりと、近年、改めて人気となります。おっと、ぎりぎり間に合いました。AKIKOさんもカヴァーしていらっしゃいます。篠笛等も使い、ジャパニーズ・オリエンテッドなカヴァーです。

さて、この「SPARTACUS」。毎度の事ながらクラブ・ジャズ発信的なことを書きましたが、映画のテーマでこれほどまでも素晴らしい曲ながらあまりカヴァーが無いのはその通りではありますが、それ以前にも幾つかカヴァーは存在しております。オリジナルに沿ったスローなタイプや4ビート的なカヴァー等。

そしてですね、猫も杓子も「SPARTACUS」を神と崇める風潮となってしまうと、いやいや他にもいい曲はありますよ。と言いたくなるのが天邪鬼。という訳で、「SPARTACUS」をカヴァーしてる楽曲や同じ雰囲気を持った楽曲を探してみました。でもね、このヴェクトルで言えばやっぱりYUSEF LATEEFのヴァージョンなんですけどね。まぁ、勝ち負けとかそういうことではなく、YUSEF LATEEFがワン・アンド・オンリーなので。

ちなみに最後に今更で恐縮なのですけれど、この企画は暖めていたにも関わらず、オルガンでROUTINE JAZZにも参加する中村君の二番煎じ。彼の著書である「ムジカノッサ・ジャズ・ラウンジ」の1コーナーの「SPARTACUS」、そしてその著に敬意を込めまして今回のコラムを閉じさせて頂きます。全般的に旧譜も新譜も並列に並べられていてとても良かったです。僕らはそういう世代なんですよね。旧譜も新譜も同時に聴いたんです。そういう愛が感じられて共感且つ大満足。私も対談ページに参加させて頂きましたので、ご興味のある方は是非!。詳しくは第三土曜日の小林径さん主催ROUTINE JAZZに足を運んで頂き、中村君に詰め寄って頂ければと思います。宜しくお願い致します。そんな訳で中村君の著書の補完とまではいかない感じで、被らない感じで幾つかのレコードを挙げさせて頂きます。

それでは、以上、お付き合いありがとうございました!。




JOHN YOUNG TRIO: SPARTACUS (LOVE THEME)
(LP: THEMES AND THINGS 1961 ARGO USA 1961)


まずは「SPARTACUS」のカヴァーから。ジャズ作品としてはYUSEFよりもこの人が先に取り上げております。後年、日本盤としてもLPでリイシューされているよう。ピアノ・トリオでのカヴァーで、オリジナルのテンポを引き継いでの一音一音紡ぐようなメランコリックさ。後半の微妙な盛り上がりが好きです。
YUSEF LATEEF: LOVE THEME FROM SPARTACUS
(LP: EASTERN SOUNDS - MOODSVILLE USA 1961)


そして、ここからです。こめかみに食い込んだ眼鏡が痛そうです。もう語り尽くされた名曲なのでこんなことを書いてしまいます。「語り尽くされた」なんていうとCITYのアルバムが浮かんでしまいます。なんて書いてますがね、最高ですよ。このアルバム。あ、やっぱし次回はYUSEF特集とかでもいいですか?。
EDDIE HARRIS: SPARTACUS
(LP: THE THEME FROM EXODUS AND OTHER FILM SPECTACULARS - VEE-JAY USA 1967)


このVEE-JAYと言うレーベルはなかなか曲者でして、元々はリズム・アンド・ブルースな作品を多くリリースしていたのですけど、この頃になると匿名性の高い作品が多く(他のレーベルの作品をライセンスしたりで)、EDDIE HARRIS以外のメンバーが分かりません。この曲は4ビート・カヴァー。
AHMAD JAMAL: SPARTACUS LOVE THEME
(LP:GENETIC WALK - 20TH CENTURY USA 1975)


RICHARD EVENSとの半々でのプロデュース作。いわゆるディスコ的なアレンジの楽曲が多く、その流れでLINDA WILLIAMSの「LA COSTA」なんかも演ってますが、「SPARTACUS」はアコースティック・ピアノ・トリオで。イントロの無駄にきらびやかな感じとか、あんましJAMALらしく無いと言えば無い。
PICO: LOVE THEME “SPARTACUS
(LP: ARANJUEZ - JAPAN 1983)


ピコことヴィブラフォン奏者の大井貴司氏によるアルバム。しっとりとしたピアノとヴァイブのイントロから、本多俊之氏によるフルートがメロディを執ります。今のご時勢で言ってしまうとエレベとシンセや、その他のエコー感がとてもフュージョン・タッチに聴こえてしまうのですが、まぁ、それはそれ。
QUARTETTO MODERNO: LOVE THEME FROM SPARTACUS
(LP: ECCO! - SCHEMA ITALY 1999)


これは本当にいいアルバム。オリジナル曲もカヴァーも充実。ヴァイブとフルートで「SPARTACUS」をカヴァー。あまりにいいアルバムなので当時はCDのみだった作品をSCHEMAに直談判してSCHEMA SEXTETのアルバムと同時に05年にDMRでアナログを出させて貰ったのも個人的に思い出深い1枚。
INO HIDEFUMI: SPARTACUS
(7INCH - INNOCENT - JAPAN 2005)


本当にタイムリーでした。まずはこのタイミングで「SPARTACUS」をカヴァーしたこと。そして、このスモーキーなフィーリングで、更には8ビートでカヴァーしてしまうところ。誰もが望んでいたところに望んでいたものが現れた感。このイントロのドラムからのメロディの入りとかもまさにDJ仕様。
NATURAL SELF: THE LOVE THEME
(12INCH - BREAKIN BREED - UK 2007)


男性コーラスを配した、いわゆる打ってるビートのブレイクビーツ・ヴァージョン。NOSTARGIA 77のリミックスは、ベースにカリンバ、ドラム、サックスというYUSEF以上に異端なアフロ・ニュアンス。今度NOSTARGIA 77はKEITH TIPPETEと新作を出しますよー。って初めて12”をご紹介した気がします。
JOHN WOOD: ONE FOR TEENIE
(LP: INNER MERGE - LOS ANGELES USA 1978)


で、ここからは似た感覚の曲ということで。MOONKSの方々にお酒を頂く機会があり(有難う御座いました!)、大河内さんがWOODについて語られていて、私初めてWOOD好きの方に出会いました。WOOD曰くYUSEFの「SPARTACUS」に影響を受けて書いた曲との事。本人が言うのだから間違いありません。
PETE LA ROCA: TURKISH WOMAN AT THE BATH
(LP: TURKISH WOMAN AT THE BATH - DAGULAUS USA 1967)


てか、このアルバム、今聴いてて「EASTERN SOUNDS」よりいいんじゃねーかと思っております。タイトル曲に近似値を感じますが、よりジャズ然とした感じでしょうか。ピアノは若かりしCOREA、サックスはSUN RA様の片腕のGILMORE。WALTER BOOKERのベースも最高です。他の曲も有名です。
AFRICANA: LATZIN NORBERT
(2LP: ANTHOLOGY 64 MODERN JAZZ IV - V. - HUNGARY 1964)


このシリーズ、いつもどれ持ってるか分からなくなります。このシリーズの中で唯一のボックス・セットで、玉石混淆ながらもかなりクオリティーの高いアルバム。この曲はクラシック的ながら哀愁感漂うメロディとフルートのテーマ、軽くポリリズミックなドラミングに近似値。ビッグバンドですが。
RENE McLEAN SEXTET: AIDA
(LP: WATCH OUT - STEEPLE CHASE - DENMARK 1975)


JACKIE McLEANの息子のRENEによる作品で、スピリチュアル・ジャズ・ファンの間ではSTEEPLE CHASE屈指の名盤、かどうかは分かりませんが。このアルバムも最高です。でもやっぱりYUSEFの「SPARTACUS」と同ベクトルでは敵う曲が見当たりません。って、こんな紹介ではもったいないアルバムなのですが。あ、最後にもう一つ。
PAUL HORN QUINTET / CLEOPATRA'S PALACE MUSIC
(IMPRESSIONS OF CLEOPATRA / COLUMBIA 1963)


と言う事で、第4回でも挙げさせて頂いたアルバムなんですけど、このアルバムは全編「SPARTACUS」と同じALEX NORTH作曲の楽曲を取り上げたアルバムです。ALEX NORTHのサントラを聴き、MILES DAVISが大絶賛したといったエピソード込みでこの特集を締めさせて頂ければと存じます。かしこ。



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▼編集後記

オルガンバー所属。常連。ヒロセダイスケ。


どうもです。DMRの廣瀬です。はい。今回は「SPARTACUS」でした。他のカヴァーとしてはBILL EVANS、AFRO BLUES QUINTET、EARL KLUGH、FREDERIK KRONKVIST。後、山本剛氏。これは全くオリジナルの要素が無いのですけれど。そして、ユニオンの佐野君がDANNY LONGもカヴァーしてるとブログに書いてました。前月に書きました「年内ガンダム制覇」。やはりキツイです。一度観たやつもメイン作を時代順に、OVAや映画版込みで、今「W」が「ENDLESS WALTZ」まで終わりました。道半ば。・・・でもごめんなさい!。「G」を飛ばしてしまいました!。あのセーラームーン・ガンダムが僕の行く手を阻むんです!。そんなことよりも、14年目突入のオルガン・バーで、複雑骨折したり、呑みすぎて救急車で運ばれたりしましょう!(悪い大人の見本且つマイメン!)。オルガンほど楽しいクラブを僕は知りません。あと、レコード買って下さい。で、クラブに行って。最高楽しいですよ。おす!。では次回。レディー・ゴー!。←このくらいは知ってます。
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