ROK-SEY
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「第16回 変拍子でも聴いてみよう」
さてさて、前回は「ワルツ=3拍子」という事でお題を設定させて頂いたのですが、今回は「変拍子」です。前回のワルツでさえ、我ながら形容句をがんがん挟んで字数を稼いだ感が見え隠れでしたが、今回も「変拍子編」という事でですね、特に言う事もない感じなのです。あー。言っちゃったぁ。でも、行きますよー。宜しくお願い致します。

まずは、「変」と言うのが付くくらいで、「変ってる」のが変拍子です。では、変ってないのは何なのか。というと、まずは、2拍子、4拍子、8拍子、16拍子・・・と、2の倍の倍の倍の・・・といった数を拍子とするものが上げられます。それこそ88拍子とかなっっちゃったら、ずどどどどどどどどど・・・となって変わってるといったら変わってるんですけども。人力じゃムリです。テンポを下げましょうか?。はい。そんなことはどうでもいいですね。いわゆる2の倍数拍子。これが「変」じゃない拍子です。そして、前回の「3拍子=ワルツ」。これも特別に「変」ではなく「ワルツ」として扱われます。これも3拍子、6拍子、12拍子・・・と、3の2倍の倍の・・・拍子は、「ワルツ」とされます。

はい、そして本題の「変拍子」です。「変拍子」といわれるものはといいますと、2拍子、そして前回の3拍子以外の拍子について「変拍子」といわれます。5拍子、7拍子、11拍子等々。「変拍子」って聴くとなんだか難しい感じですよね。自分も何の学も経験も無くこの文章を書いておりますので、聴きながら拍を取ってて訳が分からなくなること多数。でも変拍子も元は2拍子、そして3拍子を基本にしてるんですね。そして、たまに1拍子といったもの休符として足したりして拍を作ってることが殆どです。例えば、5拍子、7拍子といった拍子を構成する場合、5拍子だったら2+3=5(1.2.1.2.3.という風に拍を取ったり)だったりとか、7拍子だったら4+3=7(1.2.3.4.1.2.3. という風に拍を取ったり)とかいった具合ですね。

で、いちばん有名な変拍子の曲といえば何を思い浮かべられるでしょうか。やっぱり一番有名なのはDAVE BRUBECKの「TAKE FIVE」ではないでしょうか。この曲、タイトル通りの5拍子の曲なのですが、「TAKE FIVE」=「ちょっと休憩(5分ちょうだい)」のダブル・ミーニングでもあります。この曲の拍の取り方は3/4拍子+2/4拍子(1.2.3.1.2.)での5拍子のパターンですね。で、この「TAKE FIVE」が収められてるアルバムは「TIME OUT」というタイトルなのですが、いわゆる「タイム・アウト(時間オーヴァー)」と「変拍子(リズムから外れた)」を掛けたタイトルでして、変拍子が満載なのですね。クラシックも学び、白人でありウェスト・コーストの上品なBRUBECKは、当時も黒人ジャズ・ミュージシャンからディスられたり、後年もあんまり評価されないのですが、この59年という時期に全て変拍子でアルバムを作るという挑戦をし、そしてそれを広く受け入れられるものとし、今もって世界で一番有名なジャズといってはばからない「TAKE FIVE」を録音しました。個人的には世間の評価よりずっと素晴らしいピアニストだと思っています。

そして、もっと「変拍子」にこだわった「変」な人がいるのですが、その人はDON ELLISという人。この人はビッグ・バンド・マスターでありトランペッターなのですが、通常はバルブが3本のトランペットを改造して4本にし、微分音(音符に表せない音)まで出せるようにした変態楽器を使い、33拍子なんてざら、最大で85拍子までの曲があるとか。といっても先のお話でいえば、8拍子を10回繰り返して5拍子を1回というワン・セットと考えれば、聴く前に構える必要も無いですよね。それでもビッグ・バンドのメンバーは困りものだろうなぁ。でも、この人、「TAKE FIVE」をカヴァーするときは、逆に4拍子に編曲して演奏してたんですよね。「TAKE FIVE」なんぼのもんじゃい、と。ひねくれもの。こういう人も好きです。

で、変拍子なんですけど、トルコ音楽が非常に変拍子に特化した音楽なんですね。基本は、5、7、9といった感じで。BRUBECKも「BLUE RONDO A LA TURK(トルコ風ブルー・ロンド)」という曲を演ってますし、DON ELLISも「ELECTRIC BATH」という「トルコ風呂」をモチーフにしたアルバムを作ってます。いわゆる東アジア的モーダルなものへのオマージュを強く感じさせる側面もあるのが変拍子ジャズです。

最初、書くことがないとか自分で言ってましたけど、トルコ音楽が最後に来ることによってだいぶレジュメらしくまとめられて良かったです。

さて、今回は変拍子。今までも幾つかの変拍子曲でありアルバムを挙げさせて頂いておりますが、それ以外の変拍子曲を幾つか挙げさせて頂きます。

以上、お付き合いありがとうございました!。




YUSEF LATEEF: THE BEGINNING
(LP: JAZZ MOOD - SAVOY USA 1957)


YUSEF LATEEFのSAVOYに残した初期作は地味ながらどれも好きです。他の曲ではお馴染みの東洋楽器も使用しておりますがここではテナーです。CURTIS FULLERのトロンボーンもいい味です。メンバーはERNIE FALLOW、HUGH LAWSON、LOUIS HAYEといつも通り。テンポ遅めのルーディーな7拍子。
KEN McINTYRE: SAY WHAT
(LP: YEAR OF THE IRON SHEEP - UNITED ARTISTS USA 1962)


なかなか好きなリード奏者です。このアルバムではアルトとフルートをプレイしておりますが、こちらはアルトでのプレイ。5拍子です。ゴリゴリしたRON CARTERのベース、JAKI BAYARDのピアノもモード然と引っ張っております。ちなみに「鉄の羊」はチベットの暦(干支)みたいなものだそうですよ。
ZBIGNIEW NAMYSLOWSKI QUARTET: SEVEN-FOUR BARS
(LP:POLISH JAZZ VOL.6 - MUZA POLAND 1966)


ポーランドのMUZAは大好きなレーベルです。後のDECCA盤も人気のアルト奏者のZBIGNIEW NAMYSLOWSKIのワン・ホーン・リーダー作です。原題は「SIODMAWKA」、英題がそのまま「7/4拍子」というタイトルです。ポーランドの伝統音楽の5/4同名曲を7/4にアレンジしたもの。んー、いいですね。
WESSELIN NIKOLOV QUARTET: INDUCTION NO.2
(LP: JAZZ JAMBOREE 67 VOL.1 - MUZA POLAND 1967)


続いてもMUZA。ブルガリアのテナー奏者率いる4重奏です。若干フリーキーな部分もありますが5拍子で奏でてます。JAZZANOVAもレコメンドしてました。今度MUZA特集でもしたいなぁとか思うんですけど、共産圏の国営ですから何でもしてますしね。レーベル背景は知る由もなし。でも今度やりたいな。
LEE GAGNON QUARTET: TAKE FIVE
(LP: LA JAZZTEK - CAPITAL CANADA 1967)


さて、本文にも出てきたDAVE BRUBECKで有名な「TAKE FIVE」。数多くのカヴァーがあって、CARMEN MACRAEのカヴァーなんかはクラブ・クラシックですが、ちょっとテンポ速めのこちら。テーマはちょっと速く吹いてます的な程度なのですが、ソロ部は独創的な部分もあり。彼のフルートの方が僕は好きです。
PERRE LEDUC ET SON QUATUOR: SOYA
(LP: PERRE LEDUC ET SON QUATUOR - CBC 1967)


で、カナダつながり。ピアニスト率いるカルテットの博覧会でのライヴ音源。でも音はいいです。「SOYA」はELIZABETH SHEPERD TRIOがカヴァーしクラブ・ジャズ界へ名乗りを上げた「SOYA」のオリジナル。7拍子です。「SYNCHRONISATION」や「POUSSIERE D’ETOILE」等、アグレッシヴで好きです。
THE DON ELLIS ORCHESTRA: INDIAN LADY
(LP: ELECTRIC BATH - USA 1967)


さてさて、本文に登場したヘンな人です。便宜的にアルバム冒頭の牧歌的5拍子ビッグ・バンドナンバーを挙げさせて頂きましたが、他の曲では3-3-2-2-2-1-2-2-2の19拍子とか、5-5-7とかめんどくさいです。でも、彼の作品はそんなことを気にせずダイナミックなサウンドを楽しめるところがステキ。鬼才。
BULGARIAN JAZZ QUARTET: BLUES IN 10
(LP: JAZZ FOCUS ’65 - MPS GERMANY 1968)


MPSの中でもかなり大好きなレコードの1つです。ブルガリアのピアニストMILCHO LEVIEV率いるフルートのワン・ホーンによるカルテット・グループ。タイトル通りの10拍子のブルース(というかモード)がこちら、その他にもBEATLESの「YESTERDAY」のバロック・ジャズ・カヴァー等を収録です。
GUIDO MANUSARDI: DOINA
(LP: GUIDO MANUSARDI SOUND - DIRE ITALY 1970’S)


イタリアのピアニストのセカンド・プレス以降では「PIANO JAZZ」という名前でも知られるDIREの「3」番。この「DOINA」は3拍子、3拍子、7拍子ワンセットのテーマが壮絶にかっこいい。「HALF AND HALF」みたい。その後はワルツ・タイムへ。でもどっちのプレスも音が細いですよね。リマスタリング希望です。
GRAHAM COLLER MUSIC: SONG ONE
(LP: SONGS FOR MY FATHER - PHILIPS UK 1970)


この曲の副題は「SEVEN-FOUR」。他にも「SONGS THREE(NINE-EIGHT BLUES」、「SONGS FOUR(WALTZ IN FOUR-FOUR」等。もうちょっと長い文で本盤を「SWING JORNAL 08年3月号」で紹介させて頂きました。私如きがSJで書かせて頂けるとは。BNのある書店等でぱらぱらっと是非。
NATHAN DAVIS / MAKATUKA
(LP: MAKATUKA - SEGUE USA 1972)


サックス奏者のNATHAN DAVIS。自主レーベルSEGUEに残した1枚です。この曲は7/8のアフロ・モーダルなナンバー。ライヴ・アルバムで共演した南アフリカのドラマー、MAKAYA NTZHOKOに捧げたもの。ここでのライヴ・アルバムはSABAのBENNY BAILEY「SOUL EYES」のことでしょうね。
MICHAEL GARRICK TRIO: THANKSGIVING DANCE
(LP: COLD MOUNTAIN - ARGO UK 1972)


RENDELL-CARRの頭脳でもあるピアニストのMICHAEL GARRICKによる数少ないトリオ作。ここでの変拍子はこの曲。この曲の構成は3拍子、3拍子5拍子、5拍子の16拍子ワンセットですね。「FIRST BORN」はGILLESのコンピにも収録されたモーダル・ナンバー。最高のアルバムです。UKジャズは大好きです。
鈴木良雄: フレンズ
(LP: フレンズ - CBS SONY 1973)


チンさんことベーシストの鈴木良雄氏。タイトル曲の「フレンズ」は7拍子ナンバー。峰厚介氏のテナーのワン・ホーンに本田竹曠氏リフを繰り返すピアノと熱い演奏を繰り広げています。「K’S WAKTZ」や宮田英夫氏のフルートをフシーチャーした「SAMBA DE CIHCO」も良いですよ。
EERO KOIVISTOINEN QUARTET: ARABESKI
(LP: LABYRINTH - LOVE RECORDS FINLAND 1977)


FIVE CORNERS QUINTETのリード奏者も務めるヴェテラン。アラベスク=イスラムをモチーフとした楽曲の9拍子。ピアノは人気のVLADIMIR SHAFRANOV。フュージョン・タッチな楽曲が多いレーベルですがアルバム通して良いです。このレーベルはKENNY DOPEネタのOLLI AHVENLAHTIも有名です。
CARMEN LUNDY: TIME IS LOVE
(LP: GOOD MORNING KISS - BLACK HAWK USA 1985)


QUASIMODEもカヴァーしてましたね。更には彼女が来日までしてました。素晴らしい。ピアノはHARRY WHITAKERです。初出はPOTTER AND TILLMANのアルバムでデモ・テイクの様なピアノ弾き語りヴァージョンでした。リリース予定の中村君の本で挙げさせて頂きましたがそちらも好きです。5拍子。



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▼編集後記

オルガンバー所属。常連。ヒロセダイスケ。


世代としては「Z」世代です。こんばんは。DMRの廣瀬で御座います。切腹級に大分ご無沙汰しており大変恐縮です!。とてつもなく忙しいです。仕事が。皆様。レコード買って下さい。死ぬほど頑張りますから。切なる願い。で、ご無沙汰中は「らんま1/2」の映像を全て観て(OVA入れて多分160話位)、今は今年中に「ガンダム」と名の付くものを全部観てやろうと奮闘中。かなりタフな作業です。それにしても簡単に「変拍子」とかテーマを決めたんですけど、アメリカものに変拍子が少ないこと少ないこと。もっとあるかと思ったんですけどね。そんな感じで今回も有難う御座います!。次回もがんばりやすっ!。
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