ROK-SEY
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第4回 「Modal Jazz 3 -Nicola Conte's Modal Jazz chart-」
モーダル・ジャズについてお話させて頂いております。さて、今までの総括致しますと。

コードより古くからある音楽手法。ジャズではソロのプレイの幅を広げる為にマイルス・デイヴィス等が明確に打ち出したもの。異国風、多くは東洋の雰囲気を感じさせるメロディーを持った楽曲が多く、ワルツや変拍子の拍を持ったものが多い。その楽曲自体には展開が少ないが、墨絵にも似た侘び寂び的なものを感じさせる。

と言う感じでしょうか。もちろん4拍子、8拍子・・・等々のものもありますし、東洋ではなく、スペイン等の国をモチーフにした楽曲もあります。侘び寂びどころか暴れまくる楽曲もありますので一概には言い切れませんが、大体そんな感じです。ボクも大体で話を進めております。すみません。先に言った「東洋風である」「変拍子が多い」「展開が少ない」のがモードと言う訳ではなく、モードを用いるとそう言った楽曲になる傾向が強いと言うことになります。では、モードとは・・・と思い筆をつらつらと進ませていたのですが・・・膨大な量になってしまったので詳しい説明はちょっとこの場では泣く泣く省かせて頂きます(涙)。それでもちょっと長いのですが引き続き以下をご覧下さい。

要は、相対的な意味での「ド」の位置をどの音と捉えて全全半全全全半と言う風に音を配列するか。詰まる所、低いドから高いドまでの13音からどの音を8音抽出して「ドレミファソラシド」とするか。と言うことです。とても大雑把なのですがそういう事です。で、その配列の種類が7つあります。そのうちの1つ、ジャズでよく耳にするドリアン・モードとは、長調と同じ配列のアイオニアンを1つずらしてやると出来る配列で、ミとシにフラットがつく形になります。これで楽曲を奏でると何とも物哀しげなメロディーになります。ラにフラットが付かないだけで短調に近い配列なのもあるでしょう。誰もが知っているドリアン・モードの楽曲と言えば、サイモン・アンド・ガーファンクルの「スカボロ・フェアー」があります。あー言う哀しげな雰囲気です。さて、この7つのモードは教会旋法と言う種類でして、各国には固有の音階があります。ちょっとここからは音階と旋法をごっちゃにした感じでお話しますが、実際に音階と旋法を区別しているのかどうかも微妙なのですが、沖縄音楽を聴くとああ沖縄だな、中国音楽を聴くとああ中国だな、なんてありますよね。もちろん使われている楽器や曲調に因る所が大ではありますが、ピアノの黒鍵だけをすらすらと弾いてみて下さい。どうにも4000年の雰囲気溢れる音色がしますよね。そーいう感じです。

ちょっと分かりにくい「モード」ですが、雑誌「JAZZ WONDERLAND」に掲載の野口洋氏の説明がとても分かり易かったので以下に引用させて頂きます。


−1オクターヴ内にそれぞれ全音・半音の異なった組み合わせで置かれた音列の総称。〜(中略)〜。中世クラシック音楽の旋法にならい、ド・レ・ミ・ファ・ソ・ラ・シのそれぞれ7つを最初の音とする音列組み合わせで、ドからは変化記号がひとつもない普通の音列でイオニアン(KEY OF Cの場合、以下同)、レからはフラットが3つ目と7つ目につくドリアン、といった名前が付けられ、そのうちどれかを採用しながらアドリブを展開する方法。これにより複雑多岐に渡り、限界を極めていたコード・チェンジによるアドリブの世界から解放され、より一層の自由度がソロイストに与えられることになり、モダン・ジャズのさらなる発展がもたらされた。−


如何だったでしょうか。初回から4回に渡って書かせて頂いたモードについて。いったんここでお仕舞いとなります。お付き合い、有難う御座いました。

次回は・・・さて、どうしよう。そろそろジャズ以外のお話にも膨らませたいのですが、とりあえず、自分の大好きなヴォーカリスト、ノーマ・ウィンストンについて少しお話をさせて頂ければと思います。宜しくお願い致します。

今回のおまけは、以下、ニコラ・コンテが2003年に挙げていたモーダル・ジャズ・チャートのべスト10です。


HANK MOBLEY / NO ROOM FOR SQUARES
(NO ROOM FOR SQUARES - BLUE NOTE 1963)


テナー奏者のMOBLEYによるアグレッシヴなモーダル・ジャズ「NO ROOM FOR SQUARES」が第1位。本アルバムに収録の「THREE WAY SPLIT」もよりラテン的なモーダル・ジャズでいいです。
EJE THELIN QUINTET / THE OPENER
(AT THE GERMAN JAZZ FESTIVAL - METRONOME 1964)


その後はフリー・フォーム、エレクトリックへと向かうスウェーデンのトロンボーン奏者の重要作からの1曲。こちらも痛快に飛ばすモーダル・ジャズ。
JAZZ QUINTET '60 / BLUE AND YELLOW
(JAZZ QUINTET '60 - METRONOME 1962)


辰緒さんがカヴァーした「CUBA LIBRE」が収録されており、澤野工房さんからリイシューされたことで、我々も耳にする事が出来たアルバムです。この「BLUE AND YELLOW」をニコラは以前、テープにも収録していました。
GUIDO MANUSARDI TRIO / ARRIVIN' SOON
(BLUE TRAIN - SWEDISC 1967)


イタリア出身ピアニストのスウェーデン録音作。CANNONBALL ADDERLEYも演っている楽曲で、そちらもかないかっこいいので聴いてみて下さい。
ROY HAINES QUARTET / DORIAN
(CRACKLIN' - NEW JAZZ 1963)


本文にも出てくる「ドリアン・モード」から取ったタイトルです。ドリアン・モードとはこんな感じですっていう代表曲。聴く機会がありましたら是非。
DUSKO GOYKOVIC / BALCAN BLUE
(SWINGING MACEDOINA - COLUMBIA / EMI 1966)


トランペッターDUSKOの最人気盤でしょうか。バルカン・フォーク・ミュージックを題材とした1曲。ドイツ原版。ジャケットは後年のユーゴスラヴィアRTB盤のものです。
PAUL HORN QUINTET / CLEOPATRA'S PALACE MUSIC
(IMPRESSIONS OF CLEOPATRA / COLUMBIA 1963)


マルチ・リード奏者のPAUL HORNがここではフルート(とバス・フルート)のみを使って録音してます。映画「CLEOPATRA」を題材としつつ、あまりアラビックな感じでもない、スマートなモーダル・ジャズが満載です。
BJARNE ROSTVOLD QUINTET / VENUSIAN BLUE
(SWITCH - EMI / ODEN 1966)


JAZZ QUINTET '60にも在籍していたデンマークを代表するドラマーによる作品。メンバーはPEDERSEN、BOTCHINSKY、DREW等。
JAMES CLAY / NEW DHELI
(A DOUBLE DOSE OF SOUL - RIVERSIDE 1960)


CANNONBALL ADDERLEYファミリーのリード奏者。この曲をADDERLEYも気に入っていたようで、ライヴ盤等で幾度か取り上げています。
DON RENDELL - IAN CARR QUINTET / DUSK FIRE
(DUSK FIRE - COLUMBIA / EMI 1966)


ブリティッシュ・ジャズ史上最高傑作。ヨーロッパでは夕方と言うのはあまり爽やかなイメージではなく陰鬱なものと捉えられているようで(いわゆるTWLIGHT ZONEですね)、それを感じ取れる楽曲、ジャケットとなっております。



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▼編集後記

オルガンバー所属。常連。ヒロセダイスケ。


ダンスミュージックレコード勤務。モーダル・ジャズ、モードについて。如何だったでしょうか。私事ですが、ちょっと体調を崩して原稿が遅れて申し訳御座いません。そんな中、プラネタリウムに行って来ましたっ。ちょー楽しかったですっ。・・・原稿が遅れて申し訳御座いません。ちなみにニコラのチャートは3年ほど前にSCHEMAのサイトにアップされていたものです。お次は大好きなヴォーカリストとして、KARIN KROGか迷ったのですがNORMA WINSTONEで宜しくお願い致します。
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