ROK-SEY
 line
第3回 「Hall of fame MODAL JAZZ 50 -2-」
前回からの続きです。「モード」、「モーダル・ジャズ」とは。と言う事でカーク・ディジョージオのチャートを元にお話を進めさせて頂いておりますが、そろそろ本題。リンク先のウィキペディアの内容、雰囲気だけ掴んで頂ければ、読み飛ばして頂いてOKです。

 さて、どのようにジャズで「モード」と言う概念が定着したかと言いますと。ビッグ・バンド、スウィング隆盛の時代、ミュージシャン達が、さて今日の仕事も終わり、一杯引っ掛けに行かない?なんて具合に呑み屋さんに行くんですが、酔っ払った一人が、すらすらとフレーズを吹き出しました。お、オレもー。と言う具合に同席の仲間も続いて吹き出します。じゃぁ次はオレ。と言う具合にどんどん、ソロを吹き合います。周りが囃し立て、ダンス・バトルの様相ですね。バトルならルールがないと。と言うことで、ジャズの楽曲では「テーマ」と呼ばれる曲の冒頭のメロディーで、ある程度のルールを決めます。ここでのリズムやコードをルールとしてソロを吹きあう。改めて聴いて頂けると分かると思うのですが、殆どのジャズの楽曲は、「テーマ」と言うメロディーを演奏後、ソロを回し、そして最後に「テーマ」のメロディーに戻って締め、と言う構成になっています。これがバップの始まりと言われています。ここから、プレイヤー、リスナー共、ソロを楽しむ嗜好が強くなります。その後、時代や土地によって、ウェスト・コースト、クール、ハード・バップ等ありまして。するとミュージシャンは、もっとソロを吹きまくりたいのに、「コード」って言うルールが邪魔っけだ。何かいい手はないものか。と言うことで「モード」と言う過去の手法に目をつけます。これは「コード」ではなく「調」によって曲を構成します。「長調」「短調」とか言うあれに準ずるものです。ですので、曲中に「コード」と言う展開がないので、曲としては地味になりがち。制約がない分締りが無い。でも、そこに自由にプレイヤーが介在する余地があるのです。これを明確に打ち出したのが、マイルス・デイヴィスとビル・エヴァンスによる、59年の「KIND OF BLUE」だと言われています。そこから一気にジャズの中心となり、例えば65年以降のジャズを片っ端から聴いてみますと「モード」を取り入れていないジャズを見付ける方が難しい位です。では、敢えて「モーダル・ジャズ」と括る理由は。以下にカークの言葉を引用します。


−「モーダル・ジャズ」。音楽学者やジャズ純粋主義者達によって「モード」と言う明確なルールが設けられないでいた為、「モーダル・ジャズ」はあるタイプのジャズを定義するようになりました。「モーダル・ジャズ」と定義付けられた楽曲は、一般に、異国風、多くは東洋の雰囲気を感じさせ、ワルツや変拍子で奏でられます。複雑な和音進行、あいまいなモードの概念を拒絶したマイルスの「カインド・オブ・ブルー」で「モーダル・ジャズ」は提示され、コルトレーンの「インプレッションズ」等で、更に探求されていきます。エヴァンス、ショーター、マクリーン、そしてラッセル等によってその方法は追求されていきますが、現在「モーダル・ジャズ」と定義する場合、先に述べたように、敢えてそれを強調するような手法で演奏された楽曲を示します。−


と、自己の解釈も含め、彼の言葉を訳させて頂きました。如何でしょうか。

今回でカークのリストからは最後になりまして22枚、23曲を紹介させて頂きます。本当にいいセレクトです。これからジャズを聴こうと言う方はもちろん、ジャズを聴いている方でも再確認の意味で、これらアルバムをチェックして頂けたらと思います。エサ箱をチェックしている時、今日は買うものがないなぁ、なんて時に、あ、このジャケット、オルガンのホームページで見たな、なんて事があれば幸いです。それでいて間口の広さもなかなか。自分も未だコンプリートならず。なかなか手に入れる縁のない盤はマイボス☆小川さんにジャケットを提供頂きました。ありがとうございます。

さて、次回。「モーダル・ジャズ」編として、最後に二コラ・コンテが以前挙げていたモーダル・ジャズ・ベスト10に褌を履き替えて・・・「音楽」を中学校の授業までしか習っていない自分でも分かる範囲で、「モード」についてお話したいと思います。何卒、お付き合いの程、宜しくお願い致します。


NATHAN DAVIS: EVOLUTION (HAPPY GIRL - SABA 1965)

せっかく可愛いアルバム名なんだから、ジャケット黒はないだろ。と思うのですが。"THEME FOR ZOLTAN"は、LARRY YOUNGの「UNITY」収録曲の再演(WOODYにしたら)。6/8のリディアン・モード。
NATHAN DAVIS QUINTET: CARMELL'S BLACK FOREST WALTZ (LP: THE HIP WALK - SABA 1965)

CARMELL JONESミーツCLARKE BOLANDスモール・セット。タイトル通り"月の砂漠"的な陰影を持つ楽曲です。アルバムも最高。
DUKE PEARSON: THE FAKIR (LP: PRAIRIE DOG - ATLANTIC 1966)

BLUE NOTEの重鎮ピアニストが、ATLANTICに残した楽曲。「TAKE FIVE」風「THE FAKIR」。例えば「THE FAKIR」は「イスラム僧」と言う意味なのですが、この様なタイトルは決まってモーダルなので、レコード購入の際には気に留めてみて下さい。
JOE ZAWINUL: RIVERBED (LP: MONEY IN THE POCKET - ATLANTIC 1966)

ADDERLEYバンド、エレクトリック・マイルス、WEATHER REPORTに貢献したフュージョン・キーボーディストのソロ作。"MIDNIGHT MOOD"も最高です。ジョーヘンの「If」を演ってたりもします。
OLIVER NELSON: PATTERNS (LP: SOUND PIECES - IMPULSE! 1966)

NELSONのソプラノ・ソロが引っ張る楽曲です。かなり大好きなアルバムです。もし、こう言ったアルバムをスルーしてしまっている方がいるのであれば、非常に残念。是非。
HAROLD LAND QUINTET: TIMETABLE (LP: THE PEACE-MAKER - CADET 1967)

LANDはストレートなジャズ・ファンからの注目はいまいちですが、この盤、MAINSTREAM盤、BLUE NOTE盤と、クラブ・ジャズ・ファンからは人気のプレイヤーです。モーダルな名曲目白押しのアルバム。
IRA SULLIVAN: NINEVEH (LP: HORIZONS - ATLANTIC 1967)

トランペットとサックスを両方吹ける技巧派。スピリチュアルな要素も多分に含むアルバムであり、アーティスト。他にも"Adah"、"Horizons"等、いいアルバムです。
BOBBY HUTCHERSON: ANKARA (LP: PATTERNS - BLUE NOTE 1968)
BOBBY HUTCHERSON: EFFI (LP: PATTERNS - BLUE NOTE 1968)


BLUE NOTE未発表音源から。"EFFI"は、MAX ROACHヴァージョンも人気。最近ではBEMBE SEGUEがカヴァーしていたクラシック中のクラシック。
BOBBY HUTCHERSON: RUTH (LP: SPIRAL - BLUE NOTE 1968)

こちらもBLUE NOTE未発表集。ピアニストSTANLEY COWELLとHUTCHERSONが作成したアルバムは、「NOW」の1部を除いて全て結局お蔵入りとなってしまっていました。契約の関係かな。もったいない。
LEE KONITZ: FIVE, FOUR AND THREE (LP: STEREOKONITZ - RCA 1968)

KONITZがイタリアで録音したアルバム。ENRICO RAVA、FRANCO D'ANDREA等のミュージシャンと製作した名盤。"GIOVANI D'OGI"も人気です。
ROLAND KOVAC ORCHESTRA: BLUE DANCE (LP: TRIP TO THE MARS - SABA 1968)

ピアニストのKOVACがSABAに残した1枚。ジャケット、タイトルからも分かる通りの火星旅行をモチーフにしたライブラリー的珍盤。ヴィブラフォンが美しいこの曲を。
SAHIB SHIHAB: PETER'S WALTZ (LP: SEEDS - VOGUE 1968)

SAHIBがドイツで録音したアルバム。CLARKE BOLANDバンドと共に録られた作品で、そこからCBBBのレパートリーとしても有名な"PETER'S WALTZ"。
TOM SCOTT: SONG # 1 (LP: RURAL STILL LIFE - IMPULSE! 1968)

タイトル曲からネタ盤として人気ですが、続くこの曲も忘れないで下さいね。複雑な変拍子ナンバー"WITH RESPECT TO CORTLANE"等、ジャズとしても(端からジャズですが)いいですよ。
HUBERT LAWS: WINDOWS (LP: LAW'S CAUSE - ATLANTIC 1969)

CTI諸作以前に、ラテン・タッチのアルバムを幾つか残してますが、それとはまた違った作風。ソフト・ロック的な楽曲もあったり面白いアルバムです。CHICK COREAのピアノと彼のフルートがステキです。
MIKE WESTBROOK CONCERT BAND: WALTZ FOR JOANNA (LP: MARCHING SONG VOL 1 - DERAM 1969)

反戦平和のメッセージ・アルバム「MARCHING SONG」。「VOL.1」と「VOL.2」があって、フリー系の楽曲が多い中、本当に美しいワルツ・ナンバーのこの曲は「VOL.1」に収録。
FRITZ PAUER: GRATULIERE (LP: LIVE AT THE BERLIN JAZZ GALERIE - MPS 1970)

ウィーン出身。サイド作も多く、70年代のSABA、MPS、ひいてはドイツ・ジャズ・シーンを支えるピアニストのFRITZ PAUER。彼の代表作的1枚。ピアノ・トリオで繰り広げられる全編モーダル・ジャズ。
MUSIC INC.: BRILLIANT CIRCLES (LP: MUSIC INC. - STRATA EAST 1970)

CHARLES TOLLIVERとSTANLEY COWELLによって設立されたSTRATA EASTは、このバンドのこのアルバムをリリースする為に設立されました。彼らによる双頭ビッグ・バンド、MUSIC INC.の1曲。
WALTER BISHOP JR.: WALTZ FOR ZWEETIE (LP: CORAL KEYS - BLACK JAZZ 1971)

「SPEAK LOW」が有名なピアニストの彼が、BLACK JAZZに残したアルバムの中の1曲。HAROLD VICのソプラノが美しいワルツ・ナンバー。このアルバムから数曲、MUSEで再演してます。
CLIFFORD JORDAN QUARTET: MAIMOUN (LP: GLASS BEAD GAME - STRATA EAST 1973)

兎にも角にも「JOHN COLTRANE」が有名。あまりに有名すぎて"MAIMOUN"と言われてもピンと来ない方の方が多いはずですよね。自分も聴き直してみました。瑞々しいCOWELLのピアノに、枯れたJORDANのサックスが映えます。
SADAO WATANABE: ECHO (LP: OPEN ROAD - CBS/SONY JAPAN 1973)

このリストの中で、唯一の日本人ジャズ・ミュージシャン渡辺貞夫氏。"ECHO"は後にアルトでも再演されるフルートが美しい楽曲。続く"KALEIDOSCOPE"もアグレッシヴなモーダル・ジャズ。
HENRY BUTLER: FIVIN' AROUND (LP: FIVIN' AROUND - IMPULSE!/MCA 1986)

ピアニスト、HNERY BUTLERのデビュー作。アラビックな音階のソプラノ・サックスが怪しく揺らめく5拍子ナンバー。フリジアンモード。
MILES DAVIS / KIND OF BLUE: FLAMENCO SKETCHES (LP: KIND OF BLUE - COLUMBIA/CBS 1959)

とここまできて、どう見ても49曲しかない。ってことに気づきまして。ボクのミスではありませんよ。と言う訳で、最後に、先述のモードを明確に提示したアルバム、MILES DAVISの「KIND OF BLUE」を。BILL EVANSによるライナーの一言目に「JAPANESE」と言う言葉が出てきます。「一度筆を下ろすと消せず、修正できず、白紙の上に書かれた単純な墨跡は、彼の表現すべき全てを表し、簡潔さと、自己に課する厳しさを持って、表現されるものである」。墨絵の幽玄さとモーダル・ジャズを重ね合わせた表現です。



以上、50曲。お付き合いありがとうございました。
次回も宜しくお願い致します!。


←第2回に戻る 第4回に続く・・・→
▼編集後記

オルガンバー所属。常連。ヒロセダイスケ。


第三回。如何だったでしょうか。3月は忙しかったです。今も忙しいです。これがアップされる頃にはラクチンになってるかなー。4月は呑むぞー。でも、まだ歯医者通いが終わんないのでほどほどに。waraさんが「編集後記」と付けてくれたのでそのように書いてみました。さて、色々と勉強をしよう。8点。それではー。
 line