ROK-SEY
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第5回 「-NORMA WINSTONEでも聴いてみよう-」
今回はボクの大好きなヴォーカリスト、そして最近の再評価もかなり高いのではないでしょうか、UKロンドン生まれのヴォーカリストNORMA WINSTONE(ノーマ・ウィンストン)についてです。宜しくお願い致します。

現在も活動し、ジャズ・ファンからも多くの支持を得ているヴォーカリストです。旦那さんであるピアニストのJOHN TAYLOR、トランペッターのKENNY WHEELERと組んだグループAZIMUTH名義でのECMでの諸作もありますし、現在のコンテンポラリーな作品もありますので、彼女を「クラブ・ジャズだけ」が評価した云々と言い切るつもりは無いのですけれども、クラブ・ジャズ・シーンとは切っても切れないヴォーカリストの1人である事は間違いありません。ブリティッシュ・ジャズ、とりわけ60年代、70年代のプログレ脈で語られることも多いブリティッシュ・ジャズ・ロックを世に多く広めたのは、やはりクラブ・ジャズ・シーンあってのものかと思います。

さて、彼女。いわゆる一般的なヴォーカリストとは違います。彼女の作品には、クレジットの多くに「VOCAL」ではなく「VOICE」と書かれています。彼女の作品にはスキャットで歌われるものも多く、「広母音(ア、エ、ウ、オ等)」を使った声楽的な歌声を披露し、セットの中でも前面に立つのではなく、一つの楽器としての役割を担っていることが多いです。一つの管楽器がソロを執るように歌声を披露する。但し、その存在感は抜群です。彼女がMICHAEL GARRICK SEXTETに参加した際、テナー奏者のJIM PHILIPの代役として参加した、と言う逸話も納得なのです。そのとき彼女は「声も一つの楽器となりうる」と確信したそうです。

NORMAが表舞台に始めて立ったのは、1966年のロンドンのRONNIE SCOTT'Sでのライヴと言われています。そして、彼女の最初の吹き込みとなるのが、THE JOE HARRIOTT & AMANCIO D'SILVA QUARTETの「JAIPER」。1969年。その後は、MIKE WESTBROOK、IAN CARR、TONY COE、MIKE GIBBS、NEIL ARDLEY、MICHAEL GARRICK等々、イギリスの先鋭的なコンポーザーやミュージシャンの作品に次々と参加していきます。初期の彼女のソロ名義作品はかなり少なく、デビューとなったのが、71年の「EDGE OF TIME」。当時、竹の子のように一気に頭角を現した、イギリスの優秀なミュージシャン達が作り出したシーンが呼応して、ブリティッシュ・ジャズ・ロックのシーンが出来、またイギリスの音楽市場が、メジャー志向からアンダーレイテッド志向へ移り、DERAMやARGOといったDECCA傘下のレーベル等が設立され、これらのミュージシャンをサポートする体制を作り出していった。そしてプログレッシヴ・ロックが世界に広まっていき、聴き手は「ジャズ」と言う形態から外れていく。そして、90年代に入り、再度、クラブ・ジャズ・シーンから、「ジャズ」という視点で再評価されたブリティッシュ・ジャズ・ロック。そのアイコンとして、シンボルとして挙げられるのが、その歌声と前衛的な歌唱法とでもって人気を博すNORMA WINSTONEではないかと思うんです。

彼女に興味をお持ちの方がおりましたら、まずはCDの「NORMA WINSTONE / LIME BLOSSOM (2001 UNIVERSAL)」と言う編集盤をお薦めします。併せてGILLES PERTERSONの「IMPRESSED」シリーズも是非。他にもMICHAEL GARRICKの「TROPPO」やJOHN TAYLORの「PAUSE AND THINK AGAIN」も最高です。近年、一気にCDで再発されましたのでそちらも。以下、10枚ほど彼女の作品をご紹介させて頂きます。

以上、お付き合いありがとうございました!。


THE MICHAEL GARRICK SEXTET WITH NORMA WINSTONE / THE HEART IS A LOTUS (1970 ARGO)

RENDELL=CARRバンドの別動的メンバーでの本作は、ジャズと詩の融合をその活動初期から試みてきたMICHAEL GARRICKの集大成的1枚。そこでポエトリー・リーディングも披露するのが彼女です。
THE MIKE WESTBROOK CONCERT BAND / LOVE SONGS (1970 DERAM)

4つの「LOVE SONG」と2つの楽曲を収録。そのうち「ORIGINAL PERTER」がロンドン・ジャズ・クラシック。逆立ち名人のピーターさんに捧げた楽曲。ツアーとか一緒に回ってたんでしょうね。
NORMA WINSTONE / EDGE OF TIME (1971 ARGO)

JOHN TAYLOR、JOHN SURMAN、JOHN WARREN、NEIL ARDLEYによるコンポーズ、アレンジによる楽曲たち。豪華メンバー大所帯による「ENJOY THIS DAY」や「ERBUS」と言った長尺の楽曲が素晴らしすぎ。
SPONTANEOUS MUSIC ENSEMBLE BIG BAND AND QUARTET / LIVE (1971 VINYL)

フリー・バンドSMEは結構好きで安く見かけたら買っております。ここにはKENNY WHEELERやIAN CARR等が参加する総勢21名のSME BIG BANDがAYLERに捧げた「LET'S SING FOR HIM」に彼女が参加。
MICHAEL GARRICK BAND / HOME STRETCH BLUES (1972 ARGO)

戦時下の架空の軍隊付バンドによる演奏と言う設定。一応看護士さんと言う設定のNORMA WINSTONEのフェアリーな歌声の「HOMES STRECH BLUES」がクラシック。
NEIL ARDLEY / A SYMPHONY OF AMARANTH (1972 EMI/REGAL ZENOPHONE)

5拍子のジャズ・ダンサー「WILL YOU WALK A LITTLE FASTER」で昇天級の歌声を披露。ちなみにこの曲は「不思議の国のアリス」の詩に曲を付けたもの。他にも2つのポエトリー・リーディングを演ってます。
ALAN COHEN BAND / BLACK BROWN & BEIGE (1973 ARGO)

バンド・マスターALAN COHENによるDUKE ELLINGTONに捧げられたビッグ・バンド・アルバム。ここに収録の「THE BLUES」と言う曲に彼女が参加。かなり渋い楽曲です。が、結構好きです。
V.A. / WILL POWER (1974 ARGO)

IAN CARRプロデュース、ウィリアム(=ウィル)・シェイクスピアに捧げたアルバム。NEIL ARDLEY、MIKE GIBBS、STAN TRACEYがコンポーズ、アレンジ。メンバーも豪華。アグレッシヴなアルバムです。
TONY COE / ZEITGEIST (1977 EMI)

NORMA WINSTONEとMARY THOMAS、2名のヴォイシングをフィーチャーした楽曲を片面に1曲ずつ収めた壮大なオーケストレーション・アルバム。ジャズ、ロック、オーケストラ、ポエトリーのアマルガメーション。
NORMA WINSTONE / LIVE AT ROCCELLA JONICA (1984 ISMEZ POLIC)

便宜上NORMA WINSTONEのアルバムと書きましたが、KENNY WHEELER、JOHN TAYLOR、TONY OXLEYの英国勢にイタリアのミュージシャンが2名によるバンド。凛とした雰囲気がいいです。



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▼編集後記

オルガンバー所属。常連。ヒロセダイスケ。


曽我部さんオール・ナイト・ライヴ行って来ました!全54曲最高でした!「今日を生きよう」にきゅんと来ました。曽我部さん、岩崎さん、ありがとうございましたっ!新曲「サンセット・レゲエ」のリリースも間近。超名曲ですよー、みなさん。メロウ且つトビ。まじで最高です。さて、次は何を書こう。何にしようかな。何にしようかな。いつも楽しく書かせて頂いてます。店長(not バナナホルダー)!ありがとうございまーす。
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