「キャッチー」という表現を音楽では良く使うのですが、どういう意味か改めて調べてみた。元々は「キャッチー=キャッチしやすい」という意味が転じて「キャッチー=覚えやすい、わかりやすい」という意味で使われるようになったようだ。

そんなわけで今月のテーマは「キャッチー」。キャッチーなナンバー、キャッチーなジャケット・・・覚えやすくてわかりやすいキャッチーなレコードのセレクションです。

Toru WATANABE (pee-wee marquette)

01,03,05,07,09:
Toru WATANABE (pee-wee marquette)
02,04,06,08,10:
Masao MARUYAMA (musique dessinee)



RICHARD DE BORDEAUX / L'ENZYME GLOUTON
(BARCLAY)


某コンピに収録されたり、7インチがリイシューされたりして、最近人気のあるRICHARD DE BORDEAUX。本作は1970年前後に制作されたと思われる7インチシングル。イエロー・ジャケットがキャッチーですが、音楽の方もキャッチーです。まるでトッド・ラングレンのような一見ポップだけど毒を内包する音楽。太く黒いベースラインに、大胆なリズムチェンジ、このひねくれポップな雰囲気なヤバイですね。バッキングはJACQUES DENJEAN。


PAJARO SUNRISE / DONE/UNDONE
(FLAKE SOUNDS)


スペインはマドリード在住のSSW・YURI MENDEZのソロユニットとなった新生・パハロ・サンライズの素晴らし過ぎる2NDアルバム。派手さは無くとも確実に“名盤”と言い切れるほどの素晴らしい内容だった前作に続き、溢れんばかりのメロディセンス、柔らかい歌声が詰まった作品に仕上がりました。特に先行シングルとなった「KINDA FANTASTIC」は、キャッチーなメロディと程よいピコピコ感がマッチした、夢見心地のアコースティックポップで、仄かなミラクル感が漂っています。


JOSE BARTEL / FRUCTIDOR
(POLYDOR)


イエラ・マリのイラストのような印象的な果物ジャケット。JOSE BARTELといえば、映画『ロシュフォールの恋人たち』のサントラで歌っていたことで知られるフランスの男性ヴォーカリストですが、ソロ作も何枚か残しているようです。このシングルに収められた「FRUCTIDOR」は、混声ヴォーカルをフィーチャーしたソフトロック風のキャッチーなナンバーに仕上がっています。アレンジ〜プロデュースも本人が手掛けている。JOSE BARTEL、多才な人ですね。


MANUEL SANTO Y SU ORQUESTA DE LA HABANA / CHA-CHA-CHA - MAMBO - BOLERO - RUMBA
(MUSIDISC)


ポップなジャケットもイイ感じ…。詳細はよく分からないのですが、恐らくは南米の高名なピアニスト(あるいは、その変名?)と思われるMANUEL SANTOが残した、タイトル通りの華やかでキャッチーなラテン盤。基本は華やかなピアノと、数人のヴォーカリストをFT.したチャチャ、マンボですが、中でもダンサブルなインストのマンボ・ジャズ「SAY SI SI」、アグレッシブなホーンがリードするダンサー「QUE DICHOSO ES」、「MIRA COMO LOS POLLOS」が、キャッチーさも相まった好曲。


JACQUES DENJEAN / UN DISQUE A TOUT CASSER
(POLYDOR)


数々の仏アーティストのアレンアレンジャーとして活躍したほか、LES DOUBLE SIXのメンバーとしても在籍していたジャック・ダンジャン。これは彼の1960年代後半にリリースされたソロ作で、当時流行していた数々のダンスナンバー(TWIST、SURF、HULLY GULLY、CHA CHA ROCK…)をスキャットコーラスやオルガンを交えてグルーヴィーに演奏している。オリジナル曲のほかに「WATEMELON MAN」「BE MY BABY」のカヴァーもキャッチー。


PHANTOM PLANET - RAISE THE DEAD (FUELED BY RAMEN)

LAベースのパワーポップ・バンド、ファントム・プラネット。本国ではアイドル系のバンドとして扱われている感じで、ディスコパンク路線を押し進め、キャッチーな王道を進んでいた彼等ですが、一転、本作は王道のロックサウンドで勝負する意欲作。素晴らしいのはサビの子供達の歌声と、ひたすらホンワカ&キャッチーなコーラスワークが秀逸なスーパーポップチューンの「LEADER」。アルバムの中でも一際際立つハッピーな名曲です。


FRED BONGUSTO / UNO DUE TRE AY-BO-LE' (PRIMARY)

イタリアのカンツォーネ歌手、フレッド・ボングスト。本作「UNO DUE TRE AY-BO-LE'」は1960年代にリリースされたシングル盤で、元々は伊国営放送カロゼッロのCMのために作られた曲をセルフカヴァーしたもののようです。他にたとえようのないようなユニークなリズムアレンジで、「123…」と連呼するキャッチーなヴォーカルが印象的です。途中のSEは何処となくエキゾチックサウンドの雰囲気も漂っています。裏面はA面の替え歌のようなナンバー。


CHUNGA / CHUNGARIA (PHILIPS)

ヨーロッパの7’に多いタイプの謎の企画モノ。恐らくは仏の作曲家JEAN RENARDが手掛けたと思われるユニットの1979年作です。“チュンガ”とか“チュンガリア”とか、一体それが何なのかは分かりませんが、音の方はノリの良いキャッチーなディスコで面白い。特にイントロから飛び出す「ダバダバ〜」系のコーラスは結構強烈で、パーカッションが転がるビートもタイトで、終盤に飛び交うシンセも盛り上がります。さらにB面に収録のORCHESTRAL VER.が何故か哀愁のフラメンコギター入りで良かったりするのも驚きです…。


BRAVE LION / VOLCANO (PHEASANT)

東京を拠点に活動する9人編成のスカバンド、ブレイブ・ライオン。ほとんどの曲がオーセントリックなスカナンバーなのですが、2006年に出たこのシングル盤の裏面に収められているロジャー・ニコルスのカヴァー「DON'T TAKE YOUR TIME」だけは他と違っている気がする。疾走するリズムにつんのめるようなホーンセクション、中盤のブレイクも盛り上がります。それにしても、この曲は何度聴いても魔法に掛けられたような気分になるキャッチーな曲だなぁ。


GIORGIO TUMA / UNCOLORED(SWING'N'POP AROUND ROSE)
(production dessinee)


2ndアルバム『MY VOCALESE FUN FAIR』が奇跡的な素晴らしさだった、南イタリアはレッチェ在住のSSW、ジョルジオ・トゥマ君の幻1st。リリース以来、本国イタリアでは殆ど売れていないと言う事実が全くのウソにしか聴こえない、ついでにそのタイトルもウソにしか聴こえない(笑)位にカラフルでキャッチーで、時に切なさを帯びたジョルジオ流ポップス満載の傑作です。オープニング、愉快なスキャットともに駆け出す極上ポップ「HAPPINESS IS A STUPID SONG」を聴けば全て分かるでしょう。これを才能と呼ばずに、何と呼ぶ?