以前から計画を立て楽しみにしていた旅行をやんごとなき事情により断念した9月。その分、自宅で音楽をいろいろ聴いたり、新しい音楽をたくさん発掘できたりで、思い出には残る月になりました。

今月のお題は「9」。9人組、9枚目のアルバム、9曲目が良い曲、90年代、9月に聴くのに良い曲など、「9」に関係したレコードのセレクションです。 (ほぼ9に関係ないものもありますが…)

Toru WATANABE (pee-wee marquette)

02,04,06,08,10:
Toru WATANABE (pee-wee marquette)
01,03,05,07,09:
Masao MARUYAMA (musique dessinee)



THE BROTHERS / HE WILL BE THERE
(ZANZEE)


世界中に溢れるほど存在するであろうありがちなグループ名、その名も『THE BROTHERS』なる9人組ソウルバンドによる1973年の作品。所謂宗教系の作品で、歌詞の内容そのものは「神さま讃歌」が基本ですが、音の方は爽やかさと哀愁感、スウィートな質感が絶妙にブレンドされたメロウソウルで絶品です。軽快に跳ねるピアノが心地良い「SECRET PLACE」、メロウミディアム「HE WILL BE THERE」、泣きの「ISN'T JESUS WONDERFUL」など、そのハーモニーも良い感じです。


BATH-HOUSE BRASS / DAVY
(CAPITOL)


アメリカの男女混成グループ、バスハウス・ブラスのシングル盤。1968年リリース。「BATH-HOUSE BRASS」というのは、チューバのような形状をした玩具楽器のこと。このバンドは、この楽器にインスパイアされて結成されたグループのようですが、曲中に管楽器の音は聞こえてこない…。「DAVY」は、フィフス・ディメンション「ビートでジャンプ」タイプの躍動感溢れるグルーヴィーソフトロックです。演奏も混成ヴォーカルもラフな感じが素敵です。


DON GLASER / DON GLASER (1980)
(production dessinee)


ニュージャージー在住のSSW/鍵盤奏者、ドン・グレイサーが1980年に吹き込んでいた全編ヒップなジャズヴォーカルの傑作。スウィンギンでハッピー、そして時にメロウなサウンドがイイですが、その殆どがドン氏のオリジナル曲と言う点にも注目です。ジャズサンバ「SAN DIEGO」、愛妻に捧げたインスト・ワルツ「CAROL」に、メロウなボサノヴァの9曲目「I WANT YOU EVERYDAY」など、全編を通じて楽しめます。


DICK SYNCONA SMITH, SATIN SHEETS, REG GIBSON, THE J-J's
(CBC RAIO -CANADA)


ドットのジャケが印象的なこのアルバム、カナダの4組のアーティストの楽曲を4曲づつ収めたライブラリー盤です。1975年リリース。A面後半に収められているTHE J-J'sの曲が一様にクオリティが高い。このグループはピアニストDAVE JANDRISCH率いるコーラスグループで、カナダのコーラスグループに特有なアクの少ない洗練されたコーラスワークが魅力です。特にボサノヴァとジャズが交錯する「I'LL PLAY FOR YOU」や「BABY」が良い。


FABULOUS CONTI FAMILY / SOUND OF AMERICA
(CONTI FAMILY)


見るからに仲良し家族の記念撮影的なジャケ写も良いですね。ミシガンのローカルファミリーバンド、THE FABULOUS CONTI FAMILYの自主制作盤。キッズを含む9人組編成で、パーカスを交えて聴かせるジャズよりのサウンドを聴かせます。が、何故か収録された、強烈なブレイク入りのファンクチューン「HEY BOOGIE MAMA」がイイです。イントロのタイトなドラムブレイク、ソリッドなホーン、ファンキーなギターにアグレッシヴな転調も決まったファンクでイイです。


BEATRICE MOULIN / PAS AVEC LE DOS DE LA Q.I.R. (DISQUES ADES)

先日やっと映画『ゲンスブールと女たち』を観ました。劇中でゲンスブールがキャバレーでピアノを弾いているシーン、ボリス・ヴィアンが会場に来ていることを知ったゲンスブールがハッとする場面が印象的でした。さて、本盤はフランスの女性シンガー、BEATRICE MOULINがボリス・ヴィアンの楽曲を歌ったアルバム。1964年リリース。有名曲「僕はスノッブ」を始めとして、当時の雰囲気を伝えるシャンソン〜ジャズ満載です。


菅野光亮 / 詩仙堂の秋 (RCA)

ウットリするような和の風情。日本のジャズピアニスト/作曲家、菅野光亮氏が1970年に、九重奏編成で録音したモーダルジャズの秀作。いずれもオリジナリティに溢れた名演の数々を収録しています。中でも際立つのは、美しい旋律と、端正に刻まれるリズムがマッチした名曲「くもの糸」でしょう。緊張感溢れる出だしから、聴けば聴くほどに蜘蛛の糸に絡まって行くような、中毒性の高いナンバーです。


ANDRE HODEIR / LES TRIPES AU SOLEIL (FONTANA)

1958年製作のフランス映画『太陽のはらわた』。映画自体は未見ですが、白人と黒人の恋愛を通して、人種差別と偏見について描いた作品、だそうです。音楽はアンドレ・オディールが手掛けている。このサントラEPでは、全体通してシネジャズが楽しめますが、特筆すべきはクリスチャン・ルグランやコーラスグループJAZZ GROUPE DE PARISが参加していることでしょう。特に「RHYTHM AND BLUES No1」では、クリスチャンが高音スキャットを連発しています。


LAURIE HOLLOWAY / CUMULUS (production dessinee)

トロけるエレピが全編を支配する魅惑の1枚。英国のジャズピアニスト/作編曲家、ローリー・ハロウェイが1979年に吹き込んでいた極上のメロウ・ジャズグルーヴ満載の名作。極上のエレピ/ピアノを軸に、力強いビートと華麗なオーケストラ、ノーマ・ウィンストンの可憐なスキャットが絶妙のバランスで融合しています。全編素晴らしいですが、何と言ってもドラマチックな「キュミュライ・ニンバス」が絶品です。眼前に迫り来る、巨大な積層雲の美しさを体現したかのような名曲です。


JACQUES HIGELIN / JACQUES HIGELIN
(JACQUES CANETTI)


過去2ヶ月連続してブリジット・フォンテーヌとジャック・イジュランの共作を紹介してきましたが、本作はジャック・イジュランのソロ作です。1965年リリース。バッキングはJIMMY WALTERが手掛けている。ハモンドオルガンやアコーディオンをフィーチャーしたシャンソン〜ジャズ。「QUAND J'IMPROVISE SUR MON PIANO」「JE REVE」とか、決して派手な曲ではないのですが、なんか最近こういう曲ばっかり聴いてる気がするな。