早いもので今年も残すところあと僅か。毎年恒例になりましたが、今月は「2010年のベストアルバム、または最近のお気に入り」と題して、ワタナベが10枚のレコードを紹介します。

今年も買っていたレコードは余り変わらず、主にヨーロッパの古い7インチ中心、新譜は日本の音楽が面白かったですね。今回ここで取り上げるのは、前者のアナログ盤のセレクト(LP5枚+7インチ5枚)となりました。

Toru WATANABE (pee-wee marquette)

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Toru WATANABE (pee-wee marquette)



LES ROBOTS MUSIC / VOLUME 1
(DISQUES COBRA)


今年手に入れたレコードの中でも一番の珍盤。ジャケットに映っている三体のロボットが自動演奏した音楽です。ロボットの造形的にもツッコミどころ満載ですが、ロボットが奏でる音楽も機械仕掛けのジャストなリズム感覚と、音程の微妙な甘さのギャップが面白く、そのヘナチョコ加減に思わず笑みが零れてしまいます。ちなみにこのロボット達はオーバーホールを繰り返し、現在もヨーロッパの街のどこかで活躍中とのことです。【動画】


GUYLAIN DEMANET / AVEC S...
(VEGA)


フランスの無名の男性シンガー、GUYLAIN DEMANET。何枚かEPをリリースしますが、そのどれもが素晴らしく、僕のいま一番のお気に入りです。本EPは1960年代前半のリリースで、MICHEL NOIRETを思わせるジャジーな演奏はCHRISTIAN CHEVALIERが手掛けている。冒頭の「AVEC S...」はジャジーなバッキングに「S」で始まる言葉を淡々と語る、ケン・ノーディン顔負けのヒップなナンバー。他にもスウィンギーなジャズヴォーカル「LES PETITS BALAIS」も格好良い。


YVONNE CARRE / GEISHA-TWIST
(DECCA)


ヨーロッパ各所でレコードをリリースしているイヴォンヌ・カリー。最近の日本では『MUSIC FOR THE JET SET』というアルバムが有名ですが、本作はドイツでリリースされた1962年制作のシングル盤。イエローで「和」なジャケットが素敵ですが、タイトル曲はその名も「芸者ツイスト」。勘違い中国風なイントロから、日本語も盛り込まれたポップなツイストで、とても新鮮に響きます。裏面は「ベサメ・ムーチョ」の独語ボサノヴァ・ヴァージョンで、こちらも素晴らしい。


CLAUDE MORGAN / HOLYWOOD CITY
(BARCLAY)


古くは「オリーブの首飾り」の作者として、今日では爽快なオーケストラル・グルーヴ「CHALICO」で知られているクロード・モーガン。やはり素晴らしいメロディメイカーなのでしょう、他にも多くの名曲を残しています。僕は1969年にリリースされた「HOLYWOOD CITY」が大好きです。ミッドテンポのソウルフルなトラックに、やや哀愁を帯びたメロディで、DJ的にも使い勝手が良いです。バッキングはジャン・クロード・プチが手掛けている。


THE CAPITAL SINGERS WITH ORCHESTRA / HALLO PARTNER
(SPARKASSE)


ドイツ産ノヴェルティレコード。ジャケットの雰囲気から見ても1960年代後半のリリースと思われます。タイトル曲「HALLO PARTNER」は、キャピタル・シンガーズという男女混声ヴォーカルグループによるソフトロック的な要素もある爽快感溢れるナンバー。そして本作の真骨頂は裏面「GOLDEN TIMES」でしょう。某クラシック曲をアダプトし、疾走リズムに男女混成のダバダバスキャットが映えるポップでキャッチーなナンバー。


FERNSEH-HASE CASAR PRASENTIERT / BITTE SCHOOON! (FUR-DICH)

ドイツの子供向けTVアニメのサントラ。1970年代前半のリリースと思われます。ジャケットに映っているネズミ(?)のパペットが主人公と思われますが、独語のナレーションと音楽により進行するという、サントラではよくあるタイプのアルバムです。音楽の方は、子供向きで親しみやすい内容になっています。日本風メロディに日本語の歌詞も飛び出す「MIKIO AU TOKIO」、ブレイクビーツから始まるクラビーな「WIE MACHT DAS KANGURUH?」などが良い。


THE ROMEOS / LISTEN HERE! (COLUMBIA)

カナダの男性4人組ヴォーカルグループ、ロメオス。何枚かレコードを制作していますが、これは1965年のアルバムです。まるでフォー・フレッシュメンのように複雑なハーモニーを操るコーラスワーク。バッキングはかなりジャズっぽく、特にバート・バカラック作のジャズワルツ曲「WIVES AND LOVERS」、ジャイヴとニューオーリンズジャズが混じったような跳ねたリズムの「THAT'S A-PLENTY」などはとても格好良いです。


TRIANGLE / LE TEMPS DES TAMS TAMS (EMI)

大好きなフレンチグルーヴ。フランスのトライアングルというグループの1972年のシングル盤。ジャケットのデザインがちょっと手抜きで、ヤル気(売る気)無さそうですが、音楽の方はかなり本気度高く格好良いファンキーな演奏です。パーカッシヴでフックの効いたイントロから始まり、爽快感あふれるグルーヴィな本編に突入するところがとても気持ち良い。これは踊れますね。裏面「I.A.M.」はプログレ風味もあるシャッフル調のスキャットナンバー。


MICHELLE SCOTT / CLASSY CHASSIS (SOUL DEEP)

フロリダのマイナーレーベルからリリースされたミシェル・スコットという女性シンガーのアルバム。1976年という時代柄、ソウル〜AOR的な作風で、マリーナ・ショウ「FEEL LIKE MAKIN' LOVE」の他、「OUR DAY WILL COME」「NEVER CAN SAY GOOD-BYE」などの有名曲をソウルフルなバッキングに"黒っぽくない"女性ヴォーカルが乗るというスタイル。冒頭のAOR〜ボッサ〜ソフトロックな「I WRITE THE SONGS」が素晴らしいです。


OLIVETTI UNDERWOOD / YOUR KEYS TO SUCCESS
(OLIVETTI)


イタリアのオリベッティ社のタイプライターの練習のためのLPレコード。1968年制作。中身は音楽ではなくて、延々とタッチタイピングのコンストラクションが…。まぁ、熱心に聴くようなレコードではありませんが、ジャケットのデザインが抜群に素晴らしいですね。インナーのリーフレットもデザイン的に優れています。1950年代のオリベッティ黄金期のデザインを手掛けたジョバンニ・ピントーリによるデザインなのかもしれません。