今月のオススメ映像はブルーノートのジャケットのアートワークを手掛けたリード・マイルスへのオマージュとも言える映像。作者とかの詳細は不明ですが、非常にかっこいい。

Blue Note Album Covers in Motion

今月のテーマは「エヴァーグリーン」。何年経っても色あせない曲、ずっと昔から聴き続けてきた曲、これからも聴き続けていくであろう曲のセクションです。

Toru WATANABE (pee-wee marquette)

01,03,05,07,09:
Toru WATANABE (pee-wee marquette)
02,04,06,08,10:
Masao MARUYAMA (musique dessinee)



GEORGIE FAME & THE HARRY SOUTH BIG BAND / SOUND ADVENTURE
(COLUMBIA)


フラミンゴのライヴ盤を聴いて割と満足していたジョージ・フェイムですが、1966年リリースのこのアルバムも素晴らしかった。バッキングにタビー・ヘイズ等の英国の誇る錚々たるジャズメンを従え、正統派ジャズからR&Bまで幅広く手掛けている。軽快にスウィングし歌う「LIL' PONY」や「FEED ME」。そしてエンディング曲にジェームズ・ブラウン「PAPA'S GOT A BRAND NEW BAG」のファンキーカバーを置くセンスもニクい。


矢舟 テツロー / フルーツ&ルーツ
(VOZ RECORDS)


『エヴァーグリーン』と言えば矢舟テツロー。そんな無理矢理な言い回しもまかり通りそうなくらいにステキなメロディセンスと歌声を持つ矢舟氏の、2008年の3rdアルバム。ライブでの演奏も格好良く決まる疾走ジャズ「Please Mr. Messenger」、メロディアスな「愛を拒まれて」、ソウルジャズ「The seventh son」など、ジャズマンとしての魅力もたっぷりですが、込み上がる歌心に胸が締め付けられる「君の中の光と陰」、「自由への階段」が最高に泣ける名曲。唯一無二の才能ですネ。


KEN NORDIN / MY BABY
(DOT)


ケン・ノーディンの声が好きだ。あの深ーくスモーキーなヴォイスには何故か心癒されるものがあるのです。本作は彼の代表作でもある『WORD JAZZ』『SON OF WORD JAZZ』から選曲した1959年のアルバム。『WORD JAZZ』のイラストジャケットも好きだけど、こちらの赤ちゃんジャケットも好きだ。1950年代ウエストコーストジャズとポエトリー・リーディングのコラボレーション。こういう音楽って有りそうでなかなか無いんですよね。


ADHITIA SOFYAN / QUIET DOWN
(SELF)


その背中が物語る郷愁感もたまりません。インドネシアの首都ジャカルタで活動を続ける男性SSW、Adhitia Sofyanの自主制作のデビューアルバムは、シンプルなアコギの弾き語りを中心にした、歌心で聴かせる極上の作品。基本は宅録なので、サウンドのクオリティが高い訳では無いのですが、オープニングの「Adelaide sky」を聴いただけで彼が優れたソングライターでありシンガーであることが伝わって来る名作です。ひたすらメロディの良さで勝負する、まさしく『エヴァーグリーン』な1枚です。


ASTRUD GILBERTO / ACERCANDOME A TI
(ACCION)


僕の最も愛する映画音楽家の一人、エンニオ・モリコーネ。エヴァーグリーンな作品を死ぬほどたくさん作ってきた人ですが、本作は1971年の映画『華麗なる大泥棒〜EL FUROR DE LA CODICIA (LA CASSE)』からの2曲をスペイン語で歌っているシングル。この曲の主題歌は切ないコードチェンジを繰り返す胸をかきむしられるような名曲。それをアストラッド・ジルベルトがあどけなくたどたどしいスペイン語で歌うものですから…もう涙なしでは聴けません。


TATEFUJI / タテフジ (Nutria)

まさに“POP優等生”。『エヴァーグリーン』なメロディとハーモニーを追求する4人組、タテフジのデビュー作はこの上ない爽快感と優しさに包まれるような日本語パワーポップの名作です。そのサウンドは、いわゆる洋楽ギターポップ?パワーポップな爽やかギターサウンドなのですが、何と言ってもメロディの素晴らしさがキモ。心にグサッと響くような名曲「ハローグッドバイ」、ポップ好きの心をくすぐる「春なんです」とか本当にイイ曲。こんなに身近に優れた才能が居ると言う事実に驚きを隠せない、そんな注目のグループです。


HENDI BRUHL / THE DRIFTER (PHILIPS)

「無人島に持って行く10枚」にもきっと入るはずのハーパース・ビザール『シークレット・ライフ』。このアルバムのエンディング曲「THE DRIFTER」をドイツの女優、ハイジ・ブリュールがカヴァーしたシングルがこちら。ドリーミーなアレンジやBメロの無い曲構成から、ハーパース版を下敷きにしていると思われます。こうして数々のカヴァーを改めて聴いてみると、ロジャー・ニコルスのソングライティングのセンスは卓越してるなぁと思います。


ESTRELLA / ESTRELLA (Laguna Music)

『エヴァーグリーン』としか言い様が無い名曲「STAY」がとにかく衝撃的。マレーシアの4人組インディポップバンドEstrellaのデビュー作『Estrella』は、青さと切なさ、フレッシュさ、センスの良さがぎっしりと詰った夢のような作品です。紅一点のヴォーカリスト、Liyanaのコケティッシュな魅力ももちろんですが、ギターポップ?ボサノヴァを違和感無く同居させるセンスの良さ、そして楽曲のクオリティがスゴいのです。その象徴が「STAY」聴く度に忘れかけていた大切なモノをしっかりと思い出させてくれるような、最高の名曲です。


MAKOTO MIURA / JE SUIS SNOB (HAPPINESS)

オルガンバー周辺ではお馴染みのDJ/トラックメイカー、三浦信氏のデビューアルバム。ボリス・ヴィアンの小説をモチーフにした架空のサウンドトラックという趣きの作品で、1950〜60年代のフランス文化とジャズへの愛に溢れている。ヌーベルヴァーグ周辺のフランス映画をカットアップしたアルバムのPVがまた素晴らしい。CDブックレットに寄稿された小西康陽さんのコラム「我輩はカモである。」も痛快でした。


MATEO STONEMAN / MATEO
(production dessinee)


たったの一聴でそのスゴさが骨の髄にまで届くかのよう。鳥肌モノのシルキーヴォイスが響き出した瞬間、辺りの空気がガラッと変わってしまう位の素晴らしいサウンドがここに刻み込まれています。カリフォルニアの男性SSW、マテオ・ストーンマンがキューバを訪れ、ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブのメンバーを含む一流ミュージシャンをバックに吹き込んだキューバン・ジャズヴォーカル?ボレロの名作が本作『マテオ』です。決して派手な作品でも、踊れる作品でもない無いのですので、その魔法のような美しさはとにかく一生モノの素晴らしさ。これを『エヴァーグリーン』と言わず、何と言うのでしょうか...。