夏が終わるとヒートアップした心と身体を休息させるような音楽が聴きたくなるものです。このような音楽のことをどう形容すれば良いか考えていたところ、「甘美」というキーワードに辿り着きました。心地よくうっとりとした気持ちにさせるような音楽・・・まさに秋にぴったりではないでしょうか。

今月のお題は「甘美」。甘美なナンバー、甘美なイメージを連想させるジャケット、甘美な歌声・・・甘美な音楽のセレクションでございます。

Toru WATANABE (pee-wee marquette)

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Toru WATANABE (pee-wee marquette)
01,03,05,07,09:
Masao MARUYAMA (musique dessinee)



ROBERTO PREGADIO / ALLE TASTIERE
(production dessinee)


冒頭、「WILD GIRL」の甘美なメロディが響き出した瞬間、気を失いそうになる程に美しい作品。数多の映画音楽の名作でも知られるイタリアの作編曲家ロベルト・プレガディオ氏。彼が人知れず1974年に吹き込んだライブラリー作品が本作。氏の滑らかなピアノを軸にしたトリオ形式の一枚ですが、楽曲のメロディが尋常じゃない位に美しい。愁いを帯びた「LANDSCAPE」、「MOONLESS NIGHT」、小気味良いワルツの「WALKING IN THE NIGHT」、「MEDITATION」など、聴く度に溜め息が溢れ、また何度でも聴きたくなるような“甘美”な名作なのです…。


LES CHAKACHAS / BOSSA DE MODA
(RCA)


あの「JUNGLE FEVER」でお馴染みのチャカチャスと同一グループと思われます。これは1960年代にリリースされたシングル盤。「JUNGLE FEVER」での官能的な雰囲気とは対極にあるようなポップなボサノヴァ風ナンバーをカップリングしています。「BOSSA DE MODA」はソフトロック的なスキャット〜コーラスワークも冴えたボサノヴァ曲。裏面「INTIMIDAD」も同じくボサノヴァ風味のナンバーに仕上がっています。


KALEO / ALOHA MONDAY
(CCRE MUSIC)


再生ボタンを押した瞬間“ウソっ?”ってなる位に素晴らしい一枚。何と弱冠23歳、ハワイのSSWカレオ君のデビュー作が本作『アロハ・マンディ』。程良くハスキーな歌声と、1970年代にはここ日本でも人気を博したカラパナやセシリオ&カポノ、あるいはマッキー・フェアリーなんかまでを連想させるようなメロウなサウンドがとにかく衝撃的。オープニングの「MONDAY TROUBLE」の確信に満ちた歌声とメロディに、その想いがぎっしりと詰まっています。末永?く聴かれる一枚となる事でしょう…。


DOMINIQUE GERARD / PARS
(SENTIMENTAL)


スペインの女性ジャズボーカリスト、ドミニク・ジェラルドの1965年のコンパクト盤。センチメンタル・レコードという聞いたこともないレーベルからリリースされている。全体的に大人なムードのジャジー・ナンバーでこちらも悪くないのですが、ボサノヴァの「MON BONHEUR VIENT DE TOI」は柔らかなホーンセクションと淡いハモンドオルガンが心地良い甘美なナンバーです。バッキングはGERARD LEVEQUEという人物。


MINUANO / LOVE LOGIC
(MOTEL BLEU)


ミヌアノは、パーカッション奏者/作曲家の尾方伯郎氏による日本語ポップス・ユニット。自身もパーカッショニストとして参加するLampの榊原香保里さんをヴォーカルとしてFt.した1stが本作です。全編甘く優しいメロディと、歯切れの良いリズムワークで聴かせる素敵なポップスで、どことなく懐かしいフィーリングと、程よいブラジル音楽のエッセンスのバランスも絶妙なサウンドが抜群。アルバムとして最高なのですが、小気味良いリズムワークとメロウな音作り、胸が空くようなサビのメロディが秀逸な「果てるともなく続く宙」なんて特にイイ曲。


ELECTROGENE / JE TU IL NOUS VOUS LES AUTRES (SONOPRESSE)

フランスのELECTROGENE(=発電所)という詳細不明のグループが1975年にリリースしたシングル盤。イントロのグルーヴィーなブレイクビーツから釘付けになりますが、メロディは日本人の好みそうな甘美で哀愁漂う歌謡曲風。これをミシェルフーガンのような分厚い男女混声コーラスで歌うものですから、密かに人気のあるのも頷けます。裏面はムーグ(?)シンセサイザーをフィーチャーしたインストヴァージョンで、こちらもなかなかです。


FLAMING LIPS / CLOUDS TASTE METALLIC (WARNER)

オクラホマの4人組ロックバンド、ザ・フレーミング・リップスの1995年の通算8作目にあたる傑作『CLOUDS TASTE METALLIC』。この後の作品は、より過激な実験性の方がクローズアップされて行くのですが、本作は彼等の特異な世界感と“甘美”なメロディが融合した名作です。時にブッ飛んだサイケ(分裂気味)な歌詞と甘く切な旋律の融合はこの時の彼等でしか成し得なかったのかも知れません。涙無しでは最後まで聴いてられない名曲「CHRISTMAS AT THE ZOO」、「WHEN YOU SMILE」、「THE ABANDONED HOSPITAL SHIP」などはその象徴です…。


CLAUDE VASORI / ... ET SATAN CONDUIT LE BAL (COLUMBIA)

カトリーヌ・ドヌーヴ主演の1962年のフランス映画『... ET SATAN CONDUIT LE BAL』のサントラEP。日本未公開映画のため、日本語の情報はあまり残っていない。音楽を手掛けているのはクロード・ヴァソーリとありますが、実はこの人物、CARAVELLIの本名のようです。曲の方は全6曲。様々なタイプの音楽が入っていますが、個人的に好きだったのが、スパイジャズ風味の「GENERIQUE」とラテン風味の「BOSSA-NOVA DE LA PLAGE」の2曲。


MR.DANNY PEARSON / BARRY WHITE PRESENT DANNY PEARSON (UNLIMITED GOLD)

“マエストロ”バリー・ホワイトが手掛けた男性ソウルシンガー、MR.DANNY PEARSONの1978年の秀作。派手めの黄金ジャケットも趣味良いんですが、DANNYの澄んだハイトーンヴォイスを活かした甘く切なメロウソウルで全編が埋め尽くされています。何と言っても、優しく包み込むような温かい曲調が秀逸な「WHAT'S YOUR SIGN GIRL?」、ドラマチックな出だしからジワジワと込み上がって行く切ないメロディが”ステキの極み”な「SAY IT AGAIN」がミラクル。特に派手な作品では無いですが、とってもステキな作品です。


CLAUDE ETIENNE ET SON ORCHESTRE - LOLITA / PARLES-MOI
(VILLAGE)


クロード・エティエンヌという男性ミュージシャンがロリータという女性シンガーをフィーチャーして吹き込んだシングル盤。音の雰囲気から察するに1970年初頭の録音でしょうか。表面「PARLES-MOI」は小気味良いリムショットが決まったボサノヴァ風ナンバーで、ロリータ嬢の甘美でアンニュイなヴォーカルが印象的。裏面「REMEMBER」はミッドテンポのナンバーですが、男女混声ヴォーカルにメロウなエレピも華を添えます。