ROK-SEY
 line
「第25回 春は私を憂鬱にさせる」
Nathan Davis / Spring Can Really Hang You Up the Most
「感情の相対化」に対して「感情の絶対化」なんて言葉は絶対的に出てこない訳ですが、まぁ相対化とか絶対化とか紙一重な所もあったりなかったり、なんてね。「春は私を憂鬱にさせる」のか。しかも、もう春じゃないし。

春といえば、ここ日本においては出会いのシーズンでもあり、別れや巣立ちのシーズンでもあります。そんな歌謡曲はいっぱいあって、先日の仕事中に「ひこうき雲」のファーストからのユーミン・マラソンをしていたのですけれども、「コバルトアワー」に入っている「卒業写真」を聴いてたら、「変わっていくのは私」で「変わらないのは彼」なんだなって思って。さすがユーミン、ニュー・ミュージック!。大体の卒業ソングってのは、太田裕美の「木綿のハンカチーフ」とか斉藤由貴の「卒業」とか変わってくのって男だし、松田聖子の「制服」とかも行っちゃうのは男の方で。まぁこれに光GENJIの「グラデュエーション」を加えて俺の中の卒業ソング暫定四天王ですけど。とか思ってたら「木綿のハンカチーフ」「卒業」「制服」の作詞が松本隆だった事に気づきました。とか。そういえば「木綿のハンカチーフ」の太田裕美をないがしろにした男の出身地はどこだ?。という議論を嘗てしたのを思い出しました。不毛かつ有意義です。きっと世の中の面白いことの大半。

「Spring Can Really Hang You Up the Most」というジャズの名スタンダード・バラードがあります。「春はうきうきするもの!」という前提において「春は私を憂鬱にさせる」というタイトルです。慣用句ですかね。どこをどう読んだらそういう意味になるのかは分からないですけど。冬に終わった恋を憂いて、世界は色付き始めているのに、あなたと約束していた春は来たのに、私は一人ぼっち。そんな歌です(多分)。自分はこの曲が大好きなのですが、その中で一番好きなのはNathan DavisがドイツSABAに1965年に残した「Happy Girl」というアルバムの2曲目に収録されているヴァージョン。Nathan Davisのワンホーンとメロディーがとにかく優しくて大好きです。優しい曲が大好きです。歌唱付きのヴァージョンも多々ありますが(そちらがオリジナルなので)、もちろん英語の歌詞なのもあるでしょう、でも自分はこの英詩であろうと歌詞付きの歌よりも圧倒的に情報量が少ないはずのサックスという楽器が、それでも雄弁に物語る感じが好きなのです。切なくて、でも愛しくって。そして、このアルバム、オルガン奏者のLarry Youngが全編ピアノを弾いているというのも貴重。そして録音はドイツなのですがLarry Youngの渡欧録音というのも珍しい。Blue NoteのLarry Youngの人気盤「If」に収録の「Zoltan」をWoody ShowとLarry Young参加で演っていたりします。これもなかなか興味深いです。「Zoltan」っていうのはハンガリーのクラシックの作曲家のコダーイ・ゾルターンのことで、って言うお話はまたいつか。新主流派あたりがお好みの方はアルバム通して是非。

https://www.youtube.com/watch?v=xOB9yd54vE0

「春は私を憂鬱にさせる」のか。お友達カップルたちがデートで同じ場所に行って同じ写真を同じタイミングでインスタに上げてるのを、一人柿ピー食べながら両方に「いいね!」して、その「いいね!」のマークがハートだったりする昨今においては、「この不埒な行為を禁じる条例とか出来ないかな」とか思いながら、常日頃、羨望の生暖かい目で心から「お幸せに」と思っているので、それではこの感情は他が存在するが故の相対的なものでもあり、自己から発する絶対的でもあり、どつぼに敢えて嵌るとすれば、そもそも相対的な判断をしようと発する自己から出たものは絶対的ではないのか。まぁ屁理屈なんですけどね。ひとりでこねる屁理屈は楽しいです。違います。単純に自身の「感情の相対化」というのは客観的な視点で自分を見てみようね。という言葉です。お幸せに。でもね、絶対的であろうと相対的であろうと、いや、絶対的、相対的を取っ払って、春は少しは楽しいものなんじゃないかなって思います。このサックスもおそらく語っていますが、多分、それでも来年の春はきっともう少し。歌詞が無い分、歌詞以上のことも語れるんじゃないかなって。まぁきっとそんなもんだ。少し酔っ払っています。もう春じゃないけど。



←第24回に戻る 第26回に続く・・・
▼編集後記

オルガンバー所属。常連。ヒロセダイスケ。


お久しぶりですこんばんは!。今回からはリニューアルです。まぁ、このような立派な場所を頂いておりますので、更新、しなきゃなーなんて一人柿ピー食べながらいつも思ってるんですけれども。けれどもけれども。うだうだうだ。そんなわけで、今回は1回につき1曲にしてみました!。ダウングレードなんて言われないように頑張りますので、オルガンでお会いした際には、見たよーって、言ってくれると嬉しいので頑張ります。これからも宜しくお願い致します!。
 line