今月もマルヤマさんは都合によりお休みです。今月のピンチヒッターは、昔からのミュージックフレンド、福岡在住の渡邊さんと「渡部×渡邊=Wワタナベ・コンビ」でプロントをお送りします。このコンビ、実は2009年7月(過去記事)以来の2度目となります。

今月も特に決まったテーマは設けずに、「最近のお気に入り盤」または「11月に聴くのに相応しい盤」というゆるいセレクションでお届けします。

Toru WATANABE (pee-wee marquette)

02,04,06,08,10:
Toru WATANABE (pee-wee marquette)
01,03,05,07,09:
Kenji WARTANABE (Silenta Pop)



GILLES PERRAULT / BELLE AU BOIS DORMANT
(MAGELLAN)


両面ともにクリスチャン・ゴベールがディレクションをしている仏のジャーナリストのドキュメント番組の為に書き下ろされたレコード。特筆すべきはB面の「LES PHOTOGRAPHES」。高らかになるホーンセクションとメロディをなぞるオーケストラがグルーヴィな展開を見せる逸品。フランシス・レイ=クリスチャン・ゴベールの二人が手掛けたBRIGITTE BARDOT SHOWのあの音像と近似値で、そのアウトテイクと言われてもおかしく無いハイクオリティです。


BERNARD LUBAT AND HIS MAD DUCKS
(LES DISQUES PIERRE CARDIN)


フランスの鍵盤奏者、ベルナール・ルバが1970年代初頭に発表したアルバム。ピエール・カルダンのレーベルから出ていて、ジャケットのアートワークのコラージュが爆発している。オルガンをフィーチャーしたファンキーなレアグルーヴ「PAPPY THOMAS」、エレピが疾走する高速サンバ「AU BON LIVRE」など、ごった煮風のアルバムではありますが、アルバムの随所にガチョウの鳴き声(マネ)をフィーチャーしていて、全体をファニーな雰囲気にまとめている。


LE POP 7 GROUP / LA DAME A LA LICORNE
(CBS)


ライブラリーやCMソングを多く手掛けている仏の作曲家、PIERRE PORTEのペンによる一曲。いかにも適当に組まれたグループ名などがそそりますが、楽曲はグルーヴィなバッキングに男女のヴォーカルの掛け合い、時折パパパコーラスも飛び出すフレンチソフトロックな一曲。当時のCMソング、ラジオのジングルなどに使われていていそうです。こんなレコードがまだまだ仏には眠っているのでしょうか。


V.A. / DOWNBEAT
(DISCOFOON)


スタイリッシュなジャケット。オランダのフリークビート系のバンドを集めたオムニバス。1960年代末のリリース。8組のバンドによる全12曲が収められているのですが、どれも聞いたことのないバンド名ばかり。ですが一曲だけ、BUFFOONSというバンドが演奏している「MY WORLD FELL DOWN」に心奪われました。サジタリアスやアイヴィ・リーグで有名なソフトサイケ名曲をカヴァーしていたのです。原曲に習って万華鏡のようなコーラスに引きこまれます。


ANDRE HODEIR, LES SWINGLE SINGERS / BITTER ENDING
(EPIC)


アイルランドの作家JAMES JOYCEの小説の朗読を音楽に載せた実験的なレコード「ANNA LIVIA PLURABELLE」の続編にあたるレコード。前述のレコードもANDRE HODEIRによるシネジャズ的なアプローチにモニク・アルデベール、ニコル・クロワジールがヴォーカルを添える素晴らしいレコードですが、こちらは何とSWINGLE SINGERS。急速調なジャズにクリスチャン・ルグランのハイトーンヴォイスと悪い訳がありません。


JOSEP M. ESPINAS / CANCONS AMB ENDEVINALLA (DISCOTECA)

スペインのDO-RE-MI CHILDREN'S CHORUSです。JOSEP M. ESPINASはスペインの鍵盤奏者で、かなりの数のレコードを残しているのですが、1960年代後半から1970年代にかけて、子供コーラス隊をフィーチャーした知育レコードを何枚か吹き込んでいる。特にこの1968年リリースの6曲入りの7インチは内容充実。電話のベルの音をフィーチャーした「CANCO DEL TELEFON」は可愛くてグルーヴィでサイコーです。いま一番気に入っているレコード。


GUIDO BASSO / CHRISTMAS TODAY (RCA)

カナダのトランぺッター、GUIDO BASSOによる、ソフトロック的なアプローチのものとしては最高峰に位置しそうなクリスマスレコード。それもそのはずバックを固めるのがJIMMY DALEとLAURIE BOWERというTHE MUTUAL UNDERSTANDINGの布陣。「SANTA CLAUS IS COMING TO TOWN」や「WINTER WONDERLAND」といったイージーリスニングになりがちな楽曲を高いアレンジ力と演奏力で非凡な音にまとめあげているのは流石です。


JACQUELINE JORISS / CHANSONS D'AMOUR (TRANCE CANADA)

JACQUELINE JORISSという女性シンガー。詳細不明なのですが、女優さんのような気がする。本作は彼女が「愛=アムール」について歌った1960年代中盤リリースのアルバム。大部分がボリス・ヴィアン等の有名曲のカヴァーですが、ジャケットのクレジットと実際の曲順が全く違っていたりして、いい加減でひどいレコード(笑)。でも、一曲だけ、セルジュ・ゲンスブール「L'EAU A LA BOUCHE(唇によだれ)」のカヴァーがラテンテイストで良かったです。


MIRAGEMAN / THUNDER AND LIGHTNING (ARISTON)

イタリアのピアニストである、GIOVANNI FENATIの変名プロジェクトによるLP。数枚あるMIRAGEMAN名義のレコードの中でも特にファンキーな1枚。スキャット、ファズギター、ホーンが全曲に配され全編ハイクオリティですが中でもモッドジャズ的なアプローチから序々に楽器が追加され音圧が増していく「LIGHTNING」がお気に入り。時代的にディスコテイストも感じ取れますが、ディスコ前夜といった趣のギリギリの音像。


SARAH VAUGHAN / CHANTE EN SCAT
(MERCURY)


女性ジャズシンガー、サラ・ヴォーンのフランスでリリースされたコンパクト盤。タイトルに『歌とスキャット』とあるように、彼女の絶頂期の歌とスキャットが堪能できる。内容的には『SWINGIN' EASY』の頃の曲・・・「SHULIE A BOP」「IF I KNWE THEN」など、クラシックとも言える曲が4曲収められている。特に「SHULIE A BOP」は、バッキングの演奏も彼女のスキャットも完璧で、何度聴いても身震いするほど格好良いです。このコンパクト盤は宝物ですね。