2003.10
「ソウルフード」ってご存知ですか?アフリカからアメリカに奴隷として連れて来られた黒人たちが、白人たちの食べ残した料理や材料を使って、創意工夫を凝らした食べ物。1960年代の黒人の公民権運動が盛んだった頃にソウルフードはブラザーたちの合言葉だった。そして今では、ソウルフードを売りにして出しているお店もあるのだとか。

今月のテーマは「フード」。食欲の秋というのもありますが、食べ物関係のレコード、美味しそうなジャケット、食事しながら聴きたいレコード、さらに料理家(!?)の作ったレコード・・・でも食べすぎ(飲みすぎ)には注意ですね。




MARTIN YARBROUGH / MIXED MOODS (ARGO)

マーティン・ヤーブロウは黒いケニー・ランキンという趣きの素晴らしいシンガー。1964年シカゴ録音のこのセカンドでは、フォーク、ジャズ、カリプソ、ボサノヴァなどをミックスしたサウンドが楽しめる。張りのあるヴォーカルとギター、さらにコンガとウッドベースとの密室的なインタープレイ。A.C.ジョビン「CORCOVADO」等も良いけど、オリジナル曲「63RD STREET BAG」「JUDY SAMBA」「TAKE ME 'ROUND ONE MORE TIME」がホント最高。



ANNE-MARIE PEYSSON / REGALEZ-VOUS! (BIRAM)

ジャケットに笑顔で写るのは70年代の中頃、フランス中のハイソな主婦達を熱狂させたカリスマ料理家ANNE-MARIE PEYSSON(推測)。そんな彼女もその人気にあやかって76年に衝撃のレコードデビューを果たします(あくまでも推測)。で、肝心の音の方は、JEAN BOUCHETYの優雅なアレンジの様々なトラックをバックに彼女がお料理の作り方をレクチャーしていくと言う物。なぜか豪快なアフロファンクの「TRAVERS DE PORC AU BARBECUE」、スウィートなボッサの「SALADE DE FRUITS MILLE SOLEIL」とか、かなり良いです。さぁ、これでどんなフランス料理も3分間で出来上がりです(笑)。



LEGRAND MELLON / MOVE IT ON OVER (COLUMBIA)

ルグラン・メロン。コロムビアからシングルをたぶん3枚だけリリースしてる女性シンガー。でも本職はプロの写真家らしいです。この1966年リリースのセカンドシングルでは、アレンジをディック・ハイマン、プロデュースをテオ・マセオが担当。「MOVE IT ON OVER」は強烈なビートで攻めまくるジャジーなツイスト・ナンバーで、相当クラビー。一部で有名なラニー・シンクレアの「BYE BYE」という曲が脳裏をよぎります。



OST. MARCIA TRIONFALE / NICOLA PIOVANI (BEAT)

『凱旋行進』。お堅いタイトルとジャケットから推測するに、軍隊物サスペンスと言う感じの映画なのでしょうか?76年のイタリア映画、音楽はオスカー受賞の経験もあるベテラン作曲家ニコラ・ピオヴァーニ。物々しく重厚なマーチに混じって大人の色気が漂う哀愁のスキャットボッサ「MILITARY MUSIC」と、豪快に歌うピアノとワゥの効いたギターが腰の辺りを這い回るミディアムテンポのファンク「PIZZAPOP」が収録されています。曲名と曲調が正反対な気がしないでも無い2曲ですね(笑)。



VINO TINTO / VINO TINTO (EMI)

「赤ワイン」という意味のヴィノ・ティントはスペインの7人組(男5人+女2人)。ほとんどの曲はフォーキーでイナタい感じで付いていけないのですが、「MAR DE TUS OJOS (PUERTO DE AMOR)」だけは特別に素晴らしい名曲。ラテンソウル風のリズムにアコギのカッティングやフルートが旋律がとても爽やかで、メジャーセヴンス系のメロディーをなぞる混声ヴォーカルも素晴しいです。アルゾ&ユーディン「SOMETHING GOING」みたいな感じかな。



RALPH MYERZ AND THE JACK HERREN BAND / A SPECIAL ALBUM (EMPEROR NORTON)

お行儀の悪いおじさまが写ったジャケットも印象的。ノルウェイはベルゲン出身の3人組(同地出身ではロイクソップも人気ですが)の彼等はサンプリング+生のリズム隊と言う編成で、割と歌心を大切にしたブレイクビーツユニット。洒落たウィスパリングヴォイスをサンプリングした「NIKITA」はコンピにも収録されたりCMでも使用されて話題を呼びましたが、「DON'T」「BEATMAKER」でお馴染みのスウェーデンの女性シンガーDORISの隠れた名曲「YOU NEVER COME CLOSER」をカヴァーする辺りのセンスも抜群です。



MAX-B / NANA MORENA (BROWN GIRL) (MOVIE PLAY)

ガオー。ライオンに食べられるヒゲのオッサン。バリー・ホワイトを髣髴とさせる風貌のスペインの男性シンガー、マックス・ビー(本名MAX BOULOIS)。彼の他の曲は男気溢れまくりのアフロ〜ファンク・テイストの曲が多いんだけど、この1979年リリースのシングルでは、カリプソ有名曲「BROWNSKIN GIRL」のカヴァーが収められている。南国の風に誘われるようなカリビアン・フレイヴァーのゴキゲンな4つ打ちダンスナンバーです。



THE GEORGES ARVANITAS JAZZ TRIO / THE PINK MAGIC (REV)

GEORGES ARVANITASはフランスが誇る超一流ピアニストの一人。その数多い参加セッションや作品は集め出したらキリが無い程。70年代中盤に自身名義のトリオやカルテットでライブラリー的な作品を数枚リリースしていて、この76年の『THE PINK MAGIC』もそのうちの一つ。ARVANITASのエレガントなピアノとフェンダーローズで奏でられるトリオジャズに混じって、スロウ&ヘヴィーな「CHEWING-GUM PARTY」がワゥの効いたギター入りで珍しくファンキーです。



ROY BUDD / PLAYS HIS MUSIC FROM "SOLDIER BLUE" (PYE)

イギリスの名プロデューサー/アレンジャー、ロイ・バッドの1970年の映画音楽集。A面は「SOLDEIR BLUE」の曲ばかり再演しているのですが、B面の方はいろいろな音楽家の映画音楽テーマをカヴァーしています。B面冒頭に収められたエンニオ・モリコーネの『ある夕食のテーブル』の主題歌「HURRY TO ME」のカヴァーが嬉しい。ロイ・バッドの演奏するきらめくようなピアノのフレーズに誘われて、モリコーネの甘美なメロディがいつまでも続いていきます。



LOUIS XAVIER / JAZZ WITH A WEST INDIAN SOUL (ADDA)

タイトルは『ジャズと西インド諸島魂』とでも訳せば良いのでしょうか?ピアニストALAIN JEAN-MARIE等が名を列ねるフランス録音のインディージャズですが、西インド諸島出身のパーカッショニストLOUIS XAVIERがリーダー、作曲者としてもクレジットされているJO MAKAのサックスを中心としたスピリチュアルなジャズ作品。転がるパーカッションの刻むリズムが気持ちよい「STEPS」、フェンダーローズの音色も優しい「HELIX」辺りがハイライト。果物に塔が建っているような神秘的なジャケットも良い雰囲気を醸し出しています。




01,03,05,07,09: Toru WATANABE (pee-wee marquette)
02,04,06,08,10: Masao MARUYAMA (disques dessinee)