2002.02
2002年02月、なんとなくゾロメな気分です。今月のお題は「ふたり」。理由は単に2月だからなんですが・・・。ふたりのグループ(デュオ)もの、ふたりでヴォーカルやコーラスをとっているもの、作詞/作曲のソングライター・チーム、単にジャケットにふたりが写ってるもの、さらに飛躍して数字の2に関係したもの・・・。友達だったり、兄弟だったり、恋人同士だったり、敵対関係だったり、「ふたり」の関係はいろいろありますが、ここに紹介するレコードには一人でも三人でもなく「ふたり」ならではの微妙な関係がありそうですよ。

Toru WATANABE (pee-wee marquette)



MANHATTAN TRIO AND THE SYLVET'S / MANHATTAN SCORE (EGG)

パーティーノイズを切り裂くピアノ、追い掛ける女性コーラス、ハンドクラップ、太いベース、さらに追い討ちをかけるファンキーな男性ヴォーカルによる掛け声。全てが畳み掛けるように迫ってくる「MANHATTAN SCORE」はそんな最高にグルーヴィーな1曲。グループ名からも分かるようにトリオなんですけど(笑)。バックの女性コーラスチームが(たぶん)デュオ、しかもジャケットの美女2人だったら良いなぁ。まぁ、何と言っても素晴らしいのは二人のお顔の絶妙な角度でしょうか。この名義では7'を3枚出してます、あとトリオ名義のライブラリーもありますがそっちもかなり良いです、でも別グループかも。



NUTTY SQUIRRELS / NUTTY SQUIRRELS (HANOVER)

ジャケットの二匹のリス、元々テレビ番組のキャラクターだったみたいです。それをサッシャ・バーランド(左のリス)とドン・エリオット(右のリス)のふたりがチップマンクス風ムシ声で録音したのがこのデビュー盤(1959年)。バックの演奏は実力派ジャズミュージシャンで、他のムシ声物と比べて音楽性が圧倒的に素晴らしく、単なるノヴェルティーに終わっていない。しかも全てがムシ声によるバップ・スキャット!ディジー・ガレスピー作「SALT PEANUTS」は高速ジャズにウィットに富んだアドリブが縦横無尽に疾走する楽しい一曲。ラテンジャズ「JUMPING BEAN」もピースで良い雰囲気です。



SHARKIES / THE SECOND ONE (LSB RECORDS)

フレンチライブラリー。デュオでも何でも無いですが「2番目」らしいです。たぶん詳細も全く不明の謎の匿名グループ、そういうのに限って良いのがあるから奥が深い。ほぼ全曲スキャット(男女半々くらい)入りで、そう書くとドイツ物なんかに良くあるバカハッピーな奴を連想させますが、ここに収録されてる楽曲は「メロウ」とか「哀愁」と言ったフィーリングを感じさせる物が珍しく(嬉しく)多い。おそらく70年代中盤の録音のせいか、品の良いシンセとエレピがほぼ全曲で聴けます。以前紹介したPETER BEASSONとはまた違った雰囲気で、哀愁のボッサからフロアを心地よく踊らせるメロウナンバーまで、ほぼ全曲高水準の1枚です。頑張って探して下さい(笑)。



JET QUARTET / ADONIS (POLYDOR)

ジャケットの水着美女ふたり・・・でも彼女達は単なるモデルさん。ジェット・カルテットの実体は音から想像するに、ドラム、ベース、ヴァイブ、ヴォーカルというフランスの4人組グループみたいです。この4曲入りコンパクト盤は、スーッと透き通っていくような透明感のあるヴィブラフォンの音色と、時々クリスチャン・ルグランかと思わせる超高音の女声スキャットをフィーチャーしたスタイリッシュなジャズナンバーがズラリ。軽快にスイングするFOXナンバー「QUI ME DIRA」「T'AS DU ROUGE A LEVRES」が特に好きだなぁ。



DEBBIE CAMERON & RICHARD BOONE / BRIEF ENCOUNTER (METRONOME)

ケニー・ドリュー&サヒブ・シハブのアレンジにサブ・マルティネスも参加とくれば、それだけでもお腹一杯なデンマーク録音の傑作。デビー・キャメロン/リチャード・ブーンと言う2人の男女ヴォーカリストの歌うメロウ&グルーヴィ−な楽曲の数々は書いて行けばキリが無いほどハイ・クオリティー、全曲で聴ける心地よいエレピに完璧なリズムセクションも凄い。メロウ&クールなクラブトラック「GIMME-GIMME」、ファンキーな「TIME」では2人のスキャットも炸裂、そしてメロウなボッサトラック「STOP FOOLIN' YOURSELF」、もう溜め息が止まりません、大人の1枚。



ANDY & DAVID WILLIAMS / MEET ANDY & DAVID WILLIAMS (MCA)

アンディ・ウィリアムズの甥っ子たちの双子デュオ(当時14才)。この1973年のファーストアルバムは、ブラディー・バンチが好きならきっと反応してしまうはずのグルーヴィーなポップスのショウケース。それもそのはず、時代的にも『MEET THE BRADY BUNCH』の翌年のリリースだし、スタッフもかなり重複しているみたい。プロデューサのジャッキー・ミルズやアーティー・バトラーが手掛けた「YOU'RE THE OLY GIRL」がフレッシュな勢いに満ちたアコースティックソウル。キャロル・キング作「SATISFIED」もグルーヴィー。さすが双子兄弟、ふたりの息もピッタリです。



MESSIEURS RICHARD DE BARDEAURS ET DANIEL BERETTA / PAPA(PSYCHOSE) (BARCLAY)

「ア〜〜、パッパー!!」なんて気狂いじみた鼻づまり声で始まるその名も「PAPA」。サビ直前のドラムパートをヴォーカルにすり替えてみたりと、唯一無二のアレンジを聴かせてくれるんですが、多用されるヴァイブや控え目なハモンドの音色とかの使い方はかなりの巧者、ゲンスブールとの仕事でお馴染みのJ.C.VANNIERのおかげかも知れませんが。とにかくストレンジだけどグルーヴィーな1曲で、「L'ORANG-OUTAN」という曲も出だしのヴァイブがナイスな佳曲です。彼等のこの時期の作品はデュオも各ソロ作も結構レアですが、『WIZZZ...』というコンピでこの2曲は聴けます。



CATERINA VALENTE & SILVIO FRANCESCO / LATIN VOICES & GUITARS (ACE OF CLUBS - LONDON)

カテリナ&シルヴィオのデュエットアルバム。このふたりの名義で他にも何枚かアルバムを出していて、そのどれもフラメンコの影響が伺える作風でした。そして1967年のこのアルバム、ジャケットはかなり地味だけど、情熱的なフラメンコと都会的なボサノヴァが融合した素晴らしい作品。自分の中ではカテリナ・ヴァレンテのベストの一枚かも。スペイン語で歌われるバート・バカラック作「サンホセへの道」「小さな願い」、そしてセルジオ・メンデス&ブラジル66のヴァージョンでもお馴染みのボサノヴァ曲「LAPINHA」のカヴァーは筆舌に尽くしがたくて・・・ホント素晴らしい!



PIERRE BAROUH / LA NUIT DES MASQUES (SARAVAH)

夫婦デュオと言えば色々ありますが、フランス代表はやはりここのお宅でしょうか。シコ・ブアルキの哀愁の名曲をドミニク・ロワイエとの掛け合いでほのぼのとカヴァー。バルーはよほどこの曲がお気に入りなようで、少なくとも2人で歌った4つのヴァ−ジョンが存在します。マーチングドラムが華やかな成婚後のヴァ−ジョン、スマートなアレンジの77年の録音、時間の流れが止まったかのような教会でのライブ・ヴァ−ジョン(先月紹介した『BRAZILISSIMO』に収録のヴァ−ジョンです)、そしてドミニクのすすり泣きが印象的なこのヴァ−ジョンは、2人の距離をどんどん近づけていくような素敵な雰囲気で一杯です。



ELZA SOARES & MILTINHO / ELZA MILTINHO E SAMBA (ODEON)

ブラジルのふたり組、エルザ・ソアレスとミルチーニョの1967年のデュエット盤。ドリス・モンテイロとミルチーニョのデュエット盤とか好きならきっとこのアルバムも気に入るはず。このアルバムはふたりで歌うサンバのメドレーとそれそれがソロをとる曲で構成されていて、小気味よいテンポのサンバ〜ボサノヴァがズラリと並んでいます。特にミルチーニョがソロをとる「MAL DE AMOR」はループするベースラインがクールな一曲。エルザは後にホベルト・ヒベイロとデュエット盤を出してますが、本作の方が出来は良いと思います。




02,04,06,08,10: Toru WATANABE (pee-wee marquette)
01,03,05,07,09: Masao MARUYAMA (disques POP UP)