2002.01
明けましておめでとうございます。昨年4月から始まったこのコーナー、今年も変わらず続けていこうと思いますので、ご愛顧のほどよろしくお願いします。

今までは毎月テーマを設けてやっていましたが、今月は特にテーマを設けずに、「2001年のベストアルバム、または最近のお気に入り」てな感じでゆるーく行ってみようと思います。テーマを設けていたせいで、載せようにも載せられなかったレコードがけっこうあるんですよ。ちなみに順不同です。

Toru WATANABE (pee-wee marquette)



LISE REINAU / LISE FOR SJOV (NICOLAJ)

デンマークの女性シンガーLISE REINAUの1970年頃のアルバム。透明ヴィニールに文字が印刷されてるシースルー・ジャケが素敵。このアルバムには、ボサノヴァ、ジャズ、ソフトロックなど、僕の好きな音楽のエレメントがたっぷり詰め込まれていて、2001年に最も良く聴いたアルバムだったかも。『JESSICA』のサントラみたいな可愛らしいクラクションのと子供コーラスの入った「UD OG KIG」、この曲のカヴァーにハズレ無しというグルーヴィー・ソフトロック「FOR ONCE IN MY LIFE」、2曲の美しいボサノヴァ曲「PALOR DO BRAZIL」「PROBLEMER」とか、2001年後半ずーっと僕の頭の中で鳴り続けてましたね。



RONALD MESQUITA E CENTRAL DO BRASIL / MADALEA E TRISTEZA (MOVIE PLAY)

棚からぼた餅的に手に入れた最高にメロウな「MADALENA」のカヴァー。名曲故に数多くのカヴァーが存在するけれど、「メロウ」という言葉で括るならたぶんこのメスキータのヴァージョンは1,2を争う出来でしょう。転がるエレピとバチーダの響きにクラクラします。B面、お馴染みの「TRISTEZA」は完全にゆるいアレンジではあるけれど、リードするエレピの音色にうっとりするのは言うまでも無い最高の部屋聴き。スペインオンリーの7inchです。



JOHN RYDGREN / SILHOUETTE SEGMENTS (private label)

JOHN RYDGRENが1960年代末に自主制作したスポークンワード&コラージュのアルバム。ケン・ノーディン『WORD JAZZ』のように音楽やSEをバックに詩の朗読をしています。心の奥深くに染込むような低ーい声の男性ナレーションのバックには、ガレージサイケやソフトロックやジャズなどが渾然一体となってコラージュされていく。ヤング・ラスカルズ「GROOVIN'」などの有名なナンバー、シタールとかのインド楽器をフィーチャーした非常に美しい「DARK SIDE OF THE FLOWER」、さらにSEが飛び交う壮絶なコラージュ「SEARCH IT OUT」。こんなカラフルなポップワールド、他ではなかなか聴けないでしょ。



CHRIS WOODS + G. ARVANITAS TRIO / CHRIS MEETS PARIS (MUSICA RECORDS)

ジャケットが最高。クリス・ウッズがGEORGES ARVANITAS TRIOをバックにパリで録音した1枚。実はこれは当時の再発盤(セカンドプレス?)のジャケでオリジナルはイマイチの出来なんですが。でも、ジャケに劣らず内容もスゴイ良くて、ウッズ自作ののモーダルジャズ「MY LADY」はたぶんここに入ってるのがベスト・ヴァージョン、そして白眉は「CABARET」。しゃきっと立ったリズムの上で4人の親密なセッションが繰り広げられる、まさに至福の7分55秒。超・愛聴盤、再発されてます。



GERALDO VESPAR / SO VOU NAS QUENTES (PARLOPHONE)

ブラジリアン・ソフトロック。ジェラルド・ヴェスパールは1960年代はギタリストとして数枚のアルバムを出してますが、1970年代は編曲家として良く知られていると思います。彼自身のアルバムとしてはギターがメインのボサノヴァ・アルバム『EU E O VIOLAO』が人気ですが、このアルバムは混声ヴォーカルの入った完璧なソフトロック。たぶん1960年代末の録音だと思う。どの曲にもマリンバが効果的に使われていて、A&Mのバハ・マリンバ・バンドやティファナ・ブラスに近いサウンド。そして「DEIXA」「SAMBOU SAMBOU」といった選曲や男女混声コーラスワークからはG/9 GROUPを連想させます。



V.A. / BRAZILISSIMO (L'AROME PRODUCTIONS)

2001年もまだ出るの?って位に沢山の旧音源コンピが出たけれど、これはまた別格の1枚。全曲フランス人(あるいはその当時にフランスで録音された音源)によるブラジリアン・ソングス。ここにも収録されてるピエール・バルーに代表されるようにブラジル音楽とフランス語は結構マッチする、その歯切れの良いリズムと流れるような語感が。それを証明してるかのような最高のコンピレーション。全然違うスタイルだけど、どっちもサッカーが強い国ですね。



ELPIDA / ELPIDA (PHILIPS)

ΕΛΠΙΔΑ(エルピダ)というギリシャの女性シンガーのアルバム。彼女は確認できただけでも1970年代から1990年代まで相当数の録音を残していて、ギリシャ民俗音楽と欧米ポップスが混じりあったサウンドが多いです。1976年リリースの本作はソウルフィーリングに溢れた名曲が収録されていて、かなり気に入ってます。特にジャクソン・ファイヴ「ABC」のようなコーラスワークのハッピーなポップソウル「HEY! POU PAS」が素晴らしすぎ!2002年のフロアでもバッチリ映えるグルーヴ感。エルピダという言葉はギリシャ語で「希望」という意味があるのですが、まさに明るい希望の光が差し込んでくるような名曲でしょう。



SOUL GENERATION / BEYOND BODY & SOUL (EXPLOSIVE)

ちょっと詳しい事はわから無いんですが、例えばMODULATIONS辺りが近似値のスウィートなハーモニーソウル。これでもかって位に込み上げ過ぎのメロウナンバー「RAY OF HOPE」に、タイトルもそのままにスウィート&メロウな「SWEET THING」、澄み切ったハイトーンヴォイスにクロージングを活かしたハーモニーという在り来たりなスタイルでも本当に気持ち良くて、ついつい針を落してしまう1枚です。



SAROLTA ZALATNAY / ZALATNAY (PEPITA)

SAROLTA ZALATNAYというハンガリーの女性シンガーのたぶんセカンドアルバム(1971年)。アルバム冒頭「OCSKA IDEA」がいきなりギターポップ風で驚きますが、後はハンガリーらしいファンキー・ロックという感じの曲が並んでます…僕の中でハンガリーの音楽といえばエレキギターの入った骨太ロックという印象がある。そんなアルバムの中で「KESO ESTI ORAN」は切れ味鋭いブレイクビーツにソリッドなアンサンブルがフロア映えしそうなファンキーな一曲。やっぱりここでもエレキギターがかすかに入ってますが、FOGARASI JANOSの演奏するハモンドオルガンのザラッとした音感はすごい好きでしたね。



ITALIAN SECRET SERVICE / ID SUPER (IRMA LA DOUCE)

2001年、最もしっくり来た1曲がイタリアン・シークレット・サーヴィスの2枚組ファーストの冒頭を飾る「VOX MEDIA」。旧音源の発掘も一段落ついたかな?と言う感じのイタリアの2人組の作り上げた佳曲。シャープなミディアムテンポのブレイクビーツに乗るフェンダーローズとツボを押さえたストリングスアレンジをさらりとまとめるのはまさに「メロウ」の一言。例えば部屋でも、クラブの爆音ででも気持ち良い時間を過ごせる極上の5分間。こういうのがもっと聴きたい2002年です。




01,03,05,07,09: Toru WATANABE (pee-wee marquette)
02,04,06,08,10: Masao MARUYAMA (disques POP UP)